脳活動を活性化させる朝食の例

穴吹コミュニティ さーぱすねっと 人生100年時代のスマート・エイジング

株式会社穴吹コミュニティが運営する入居者専用「さーぱすねっと 人生100年時代のスマート・エイジング」に『朝食習慣が「幸せ度」や「生活充実度」を高める脳科学的理由』と題した小論が掲載されました。以下、その全文です。

朝食を毎日食べる人は、週2日以下しか食べない人よりも「幸せ度」が高い

筆者らは朝食習慣と「幸せ度」や「生活充実度」との関連性を20歳代から60歳代の働く人1000人(男性500人・女性500人)を対象に2010年と22年の2回調査しました。

調査では朝食を食べる頻度に加えて、幸せ度の自己採点や幸せの基準、仕事に対する意識等について尋ねています。

その結果、朝食を毎日食べる人は、週2日以下しか食べない人よりも「幸せ度」や「生活充実度」が高いことが明らかになっています。

本稿では、これらの結果の背景となっている「脳科学的理由」をお話しします。

朝食を抜くと認知能力が低下したり、イライラやだるさを感じやすくなる

脳が働くためには、情報処理を司る脳の神経細胞にエネルギーを供給する必要があります。神経細胞は「ブドウ糖のみ」をエネルギー源としています。

一方、脳内にはエネルギー源を保存する場所がありません。このため、脳を働かせるには常にブドウ糖の供給が必要です。

朝食を抜くとブドウ糖が供給されない状態が長く続くことになり、脳はいわば「ガス欠」状態になります。すると、集中力や記憶力といった認知能力が低下したり、イライラやだるさを感じたりします。

15歳から69歳の男女1,100名を対象に調査したところ、朝食を毎日食べる人は、そうでない人に比べて、午前中の「やる気」が大きいことがわかっています(図1)。

朝食の主食は、GI値の観点から「パン」より「米のご飯」がよい

中高年の方を対象に講演する際に尋ねると、年配の方は朝食をきちんと摂る場合が多いようです。ところが、一人暮らしの方はパン食だけという場合も少なくありません。

実は、朝食の主食は、「パン」より「米のご飯」が脳活動の観点からよいことが明らかになっています。理由は、パンよりも米のご飯の方が「グリセミック・インデックス(GI)」という数値が低いからです(図2)。

GI値は、どれくらいの速度で血糖値が上昇するかを数値化したもので、ブドウ糖を基準値100として表示します。

GI値が低いと血液中の血糖値の変動が少なくなります血糖値の変動が少ない方が、脳に効率よく栄養が回ることがわかっています。

朝食が「糖質だけ」では脳は働かない 「補助的な栄養素」が必要

一方、朝食がおにぎりだけでは、脳は働かないことがわかっています(図3)。おにぎりだけ、つまりデンプン質(ブドウ糖)だけでは脳を働かせるのに十分ではありません。

ブドウ糖が脳の神経細胞で有効に使われるには「補助的な栄養素」が必要なのです。

ビタミンB1(豚肉に多く含まれる)は、ブドウ糖をエネルギーに変換する際に必要な栄養素です。また、ビタミンB1の分解を防ぎ、吸収をよくするためにアリシン(にんにく、ねぎ、ニラなどに含まれる)の摂取が重要です。

さらに、必須アミノ酸であるリジン(納豆、味噌、豆腐など豆類、卵黄に含まれる)もブドウ糖代謝の促進に有効です。

脳を働かせるには米のご飯、ビタミンB1、アリシン、リジンを摂るのがカギ

以上の知見を踏まえると、朝食には米のご飯を主食として、前述の補助的な栄養素を含む「和食」が、脳活動を活性化させる観点から優れています。

具体的には、米のご飯、豚汁、納豆、卵が入ったメニューが、脳を働かせるのによい朝食の例です(写真)。

もちろん、これ以外でもよいのですが、脳を働かせる朝食には、①米のご飯、②ビタミンB1、③アリシン、④リジン、といった栄養素を摂ることがカギです。

本稿をお読みになられたら、ぜひ、次の朝食から実践してみてください。