2022年9月27日 東京藝術大学「共生社会」をつくるアートコミュニケーション共創拠点
高齢者の社会的孤立予防・解決の施策としての芸術の可能性―――こんなテーマでお話しすることになりました。
今回の講演会の主催者である東京藝術大学「共生社会」をつくるアートコミュニケーション共創拠点は、「芸術と福祉とテクノロジーの融合による誰もが孤立しない『共生社会』の実現」を目的に活動しています。
「社会的処方」と「文化的処方」
「社会的処方」とは、身体的健康のみならず、精神的及び社会的に健康であることのために、薬ではなく、社会との繋がりを専門人材であるリンクワーカーが医療機関等と連携し必要とする者に処方する仕組みのことです。
もともと1980年頃からイギリスで取り組みが始まり、社会実装が進んでいます。日本でも2018年頃から地域での取り組みが始まりました。
これに対して「文化的処方」とは、福祉施設や文化施設等においてコミュニケーションを誘発することができる新たな芸術体験を言います。
拠点では「文化的処方」の手法を開発し、それを専門人材「文化リンクワーカー」が高齢者に届けることで、誰もが取り残されず、人々が社会に参加できる新しい社会的回路をつくることを目指しています。
スマート・エイジングの考えとアートとの親和性
今回の講演会で私は、1)スマート・エイジングと脳の健康の影響要因についてお話しし、他者とのコミュニケーションを伴う知的文化活動は脳の健康維持に有益であることを示します。
そのうえで、2)50歳以上の人を対象に「世代原体験」を踏まえた「自己復活消費」「夢実現消費」のきっかけの場を作ると孤立気味の人が文化活動を始めやすくなることをお話しします。
勉強会では、私以外に京都大学 こころの未来研究センター 内川由紀子教授の講演もあり、その後、拠点長の東京芸術大学 伊藤達也特任教授とのパネルディスカッションも予定しています。
高齢社会の課題解決に芸術がどうかかわるか、私にとってもチャレンジングなテーマで楽しみです。
人生100年時代を乗り切るには、加齢(エイジング)に伴う様々な変化に対する身体と心の“適応力”が必要。本書のテーマは「いかにして ”加齢適応力”を身につけるか」です。超高齢社会での〝賢い〟歳の重ね方の指南書。
「芸術×福祉×テクノロジーの融合による誰もが孤立しない共生社会」の実現を目指す。日本が直面している課題の一つに、超高齢化に伴う障害と、望まない孤独・孤立がある。65歳以上の割合が30%超える2030年以降の社会で、高齢者が社会参加しにくく、生きがいや創造性を実感できなくなることは、個人の健康のみならず、経済的観点からも社会への大きな打撃となる。よって本拠点では、あるべき未来の社会像として、「個々人の尊厳が認められ、誰もが生涯を通して社会に参加でき、生きがいと創造性を持って生活できる共生社会」の実現をビジョンに掲げ、多様な人々が結びつく現代社会にあった新しいコミュニティの形を「芸術×福祉×テクノロジー」で提案する。個人の生きがいや尊厳に直結し、人が人として生きるための体験「文化的処方」(社会的処方を援用)を開発し、社会参加の機会となる「文化施設」の利活用を促進させるテクノロジーの開発・導入を進める他、誰もが孤独しないアートを介したコミュニケーションを持続的に運営、普及させるための社会環境(これらを包括して「共生社会PLANET」と呼ぶ)の構築にかかる研究と実践を行う。