「脳血管年齢」の計測で脳卒中予防を

シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第188回

脳年齢とは

東北大学発ベンチャーのNeU(ニュー)「脳血管年齢」と呼ぶ脳の健康チェックの新たな指標の提供を23年1月より開始する。脳血管年齢という言葉は、脳の血管年齢を意味するが、従来存在する「脳年齢」との違いを整理しておく。

脳年齢とは個人の認知機能検査スコアが実年齢何歳の平均値に相当するかを表したものだ。多くの年代の健常者に認知機能(実行機能)検査をやってもらい、実年齢と認知機能検査スコアとの相関係数を算出し、これに基づいて評価している。

この意味において脳年齢とは認知機能年齢と言える。東北大学の川島隆太教授が監修した任天堂「脳を鍛える大人のDSトレーニング」で初めて実装したものだ。

脳血管年齢とは

NeUキオスク利用風景

これに対して脳血管年齢は、脳の毛細血管レベルでの動脈硬化の指標として新たに提唱するものだ。NeUが商品化した脳の健康チェック機器、NeUキオスクの利用者の脳活動データの解析結果を基にしている。

NeUキオスクでは利用者が、NeU開発の脳センサーを頭に装着し、脳活動をモニターしながら様々な認知課題を行うようになっている。

脳センサーはNIRS(近赤外光分析装置)で、脳の前頭前野と呼ばれる中枢部の神経細胞そばの毛細血管の血流量変化から神経細胞の活動量を計測する。

多くの利用者の年齢と脳活動量の変化の相関を調べた結果、課題開始から最初の脳活動のピークまでの時間(ピーク潜時という)が加齢に伴い有意に遅くなることが明らかになった。

脳活動が活発になるとは、脳の神経細胞の活動が活発になることだ。神経細胞は活動のためにはエネルギーとなるブドウ糖と酸素を必要とする。この両者は神経細胞そばの毛細血管から供給される。この際に毛細血管の血流量が増えるため、血管が拡張する。

加齢に伴う「ピーク潜時」の遅れは、この毛細血管の拡張のタイミングが遅くなったことを示している。つまり、毛細血管が硬化していると考えられ、動脈硬化の指標となる。

年齢との相関のあるピーク潜時と実年齢との相関関数より、実測したピーク潜時が何歳に相当するかを算出する。これを「脳血管年齢」(特許出願済)と呼ぶ。

要介護原因の上位は男が脳卒中、女が認知症

厚生労働省の国民生活基礎調査(2019年)によれば、要介護になった原因の構成割合は、実は男女で異なる。

男性は脳血管疾患(脳卒中)が非常に多く、次いで認知症が多い。これに対して女性は認知症と骨折・転倒、関節疾患が非常に多いのが特徴だ。

認知症の約3割は脳卒中が原因なので、これを考慮すると女性も脳卒中はそれなりの割合になる。

脳卒中は動脈硬化が進んだ結果起こる。動脈硬化の診断・評価は、通常病院やクリニックで血管年齢検査(CAVI検査、ABI検査)か、頚動脈エコー検査で行う。

これらの方法はいずれも心臓から手足まで、または頸動脈の動脈硬化を評価するもので、脳の毛細血管を直接的に評価するものではない。

脳年齢と脳血管年齢が同時に計測できるNeUキオスク

NeUキオスクが優れているのは、ディスプレイで表示される認知機能課題に取り組むと、認知機能指標である脳年齢を算出するのと同時に脳の毛細血管の動脈硬化指標である脳血管年齢も算出してくれることだ。

1日15分程度、課題に取り組むだけで要介護になる原因のトップ2の予防につながる情報が得られる。高齢者施設やシニア住宅などの入居者向けに極めて有用だろう。