スマートシニア・ビジネスレビュー 2010年3月17日 Vol.139
なぜ、シニア向けカフェは苦戦するのか
私はこれまで拙著「シニアビジネス」や雑誌寄稿、講演等で「退職者のための第三の場所」というコンセプトを提唱してきた。それ以来、多くの企業が拙著を参考に、シニアを対象としたカフェ等に取り組んできた。
だが、私の知る限り、多くの場合、この取り組みは苦戦している。その理由の一つは、人は集まるが収益が上がりにくい「単独孤立型」ビジネスモデルになっていることだ。
これに対し「連結連鎖型」ビジネスモデルへの転換を拙著「団塊・シニアビジネス7つの発想転換」で推奨してきた。今回は、これとは違う視点での理由を述べたい。
「第三の場所」のコンセプトとその商品への応用
ご存じでない方もいると思うので、ここで「第三の場所」のコンセプトとその商品への応用について復習しておく。
社会学者のレイ・オルデンバーグが、自著The Great Good Placeの中で家庭(第一の場所)でもなく、職場(第二の場所)でもない「第三の場所」が、社会的に重要な機能を担っていることを指摘した。
この考え方にヒントを得て、アメリカ人に第三の場所を提供することをサービス・コンセプトにして、それまでの立ち飲み主体の店舗戦略を大幅に変更し、大成功を収めたのがコーヒーショップ・チェーン「スターバックス」である。
スターバックスが提供した第三の場所としての価値は、現役サラリーマン・OLに対して社内にずっといることの閉塞感から脱出して発想転換できる空間を提供したことだ。
会社の会議室だと出にくい意見も、スターバックスのような場所だと出やすくなる人も多い。これは、知的思考を促進させ、自由に意見が言いやすくなる「場のセッティング」が重要であることを示している。
スターバックスが成功したのは、このような場のセッティングを商品化したことにある。
以上の通り、現役サラリーマン、OLに対しての「第三の場所」はビジネスになる。その理由は、スタバを例にとれば、
①収入のある現役にとってこの程度の出費は負担にならないのでよく使う、
②一回利用時あたりの滞在時間が短いため、回転が速い、からである。
退職者に対しての「第三の場所」がビジネスになりにくい理由
一方、退職者(離職者)に対しての「第三の場所」(スタバ)がビジネスになりにくいのは、
①多くの年金生活者にとって、スタバでの出費は高価で負担に感じる、
②できるだけ長く滞在したいのだが、長時間居づらい雰囲気になっている、からである。
最も重要なのは、現役サラリーマン・OLにとって、「第一の場所(家庭)」と「第二の場所(職場)」では満たされないニーズを満たす場としての「第三の場所」に利用価値がある点だ。
一方、もはや「第二の場所(職場)」に行かない退職者(離職者)にとっては、このような「第三の場所」の利用価値は著しく下がる。つまり、「第三の場所」をビジネスとして成立させるには、「第二の場所(職場)」が存在する人を対象にしなければならないのだ。
運営しているシニア向けカフェ等が苦戦している場合、この視点で見直しをされることをお勧めする。
シニアビジネス・コンサルティングでは、例えば「シニアを対象にした会員制サービスを立ち上げたが、さっぱり客が集まらない・・・」などシニア向け事業で遭遇しやすい経営課題の解決策を伝え、事業を成功に導きます。