海外旅行者のICTスキル支援の需要が高まる

シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第184回 

海外で進む「電子化」の波

先日、ほぼ3年ぶりに海外出張した。行先はシンガポールだったが、そこで痛感したのは、あらゆる手続きに「電子化」の波が浸透していたことだ。

成田空港での出国手続きでは、パスポートを読み込ませ、顔認証でゲートを通過する形式がかなり増えた一方、出国検査官に紙のパスポートを見せて出国印を押してもらう形式も並存している。

これに対して、シンガポール・チャンギ空港での出国は100%前者の形式で、後者は見られなかった。

入国手続きは、チャンギ空港では従来の入国カードは廃止され、「My ICA」というアプリに必要事項を入力する形式になっていた(写真1)。アプリはスマホかパソコンで使えるようになっている。

実は私はこの仕組みへの変更を事前に知らず、到着後にスマホにアプリをインストールして手続きした。

My ICAでは出入国管理に関する全ての手続きができるようになっており、新型コロナの接種状況情報もここに入力する。日本と異なり、PCR検査の陰性証明書などは不要だ。(注:9月7日より日本でも条件付き不要となった)

入力完了後、入国ビザが電子的に発行され、メールでも通知が来る。その後入国管理担当者のいるゲートで簡単な質問と顔認証を行い、入国手続きは完了する。

煩雑な日本への入国手続き

一方、成田空港での入国手続きは煩雑だ。到着後、水際対策と称した面倒な手続きがあり、ここで入国条件を満たさない人は待機させられたり入国拒否されたりする。

特に入国72時間以内にPCR検査を受け、陰性証明書を入手する規則により、証明書がないと滞在国から航空機に搭乗できない

このため滞在国で検査を受けられる場所を探し、アポを入れ、そこまで移動して受診手続きを行う必要がある。

当然ながらこれらの作業を全て英語で行う必要があり、手続きはスマホかパソコンが必要だ。これが日本人観光客にはハードルが高いと思われる。

入国後の手続きを簡素化するために「My SOS」というアプリに滞在国出国前に登録するように推奨されているが、このアプリと手続きがわかりにくく、煩雑で評判が悪い。(私の帰国後にPCR検査を条件付きで免除すると発表された。もっと早くしてくれたら、と言いたい)

食事や買い物に進む電子化

メニュー読み取り用バーコード

電子化の波は出入国手続きだけにとどまらない。現地でレストランに行くと多くの店で紙のメニューがない。代わりにスマホでバーコードを読み取り、スマホに表示される食事メニューを見て注文するようになっている(写真2)。

日本でも紙のメニューを廃止したレストランが大手チェーンで増えているが、必ず注文用のタブレットが備え付けられている。だが、海外ではそうした例がほとんどない。自分でスマホを持っていなければ食事の注文が出来ないのだ。

買い物の場面でも電子化は進んでいる。そもそも日本よりも海外では買い物時の電子マネーやバーコード決済が主流になっている。日本でもかなり普及してきたが、例えば日本でポピュラーなSUICAやPay Payなどは海外では使えない。

唯一Apple Payは登録するクレジットカードが「コンタクトレス決済」に対応していれば海外でも使える可能性があるのみだ。従来海外旅行の際は現地通貨の現金かクレジットカードを使った。これからはスマホによる電子決済が不可欠になるだろう。

ICTスキル支援の需要が高まる

以上の通り、海外では電子化の波が進んでいる。コロナ禍がそれを加速している。今後海外旅行が本格的に回復する際、旅行者のICT活用と英語でのやり取りが不可欠になる。

ということは、こうしたスキルを支援するサービスの需要が高まるとも言える。新しいビジネスは常に変化により生じる「不の解消」にある。