2024年5月10日 シンガポール社会科学大学 特別講演会報告
日本と異なるシンガポールの高齢者の積極的な反応
久しぶりの海外での一般市民向けスマート・エイジングの講演会でした。
講演内容は拙著「スマート・エイジング 人生100年時代を生き抜く10の秘訣」からの抜粋がベースです。主な内容は次をご覧ください。
気温37度を超える炎天下にも関わらず、定員を超える216名の方が参加され、会場はほぼ満席状態でした。参加者の年齢層は70代が中心で、次いで65歳から69歳までと80歳以上が多かったです。この年齢構成だと通常は講演の途中で舟をこぐ人が出てもおかしくないですが、そうした人は一人もおらず、約2時間、最後まで熱心に耳を傾け、質疑にも積極的に参加されていました。
会場はマリーナベイサンズから北へ車で15分程度の所にあるシンガポール社会科学大学。100人程度の聴衆のうち、9割が50代から70代のシンガポール市民。
講演時間が40分だったので、想定聴衆が興味を持つと思われる内容に絞り込み、かつ、日本とシンガポールとの共通点・相違点を随所に入れてお話ししました。
私の講演では健康に関する統計図表や写真、動画を多くお見せするのですが、講演冒頭から多くの聴衆が席を立ち上がって、ことごとくスマホで写真を撮っていました。
このあたりの反応が、日本の平均的な高齢者との違いです。シンガポールの高齢者は、日本の高齢者に比べてスマホなどの情報機器の扱いに慣れており、かつ、情報収集に貪欲だと言えましょう。また、今回の聴衆は健康に関する問題意識・関心度もかなり高いと言えます。
話を進めていくと、ひとつひとつ説明する度に「おお~」という大きな歓声や、「な~るほど」という納得の反応。私が質問を投げかけると即座に反応し、随所で何度も笑い声につつまれました。
このような、打てば響く反応が多い聴衆に対しては講師としても話しやすく、40分の講演はあっという間に終わりました。
質疑応答はまるで小学校低学年のような全員挙手での積極性
驚いたのは、講演後の質疑応答の時間での質問の多さです。一人の男性が「今日の話では食事の話がなかったが、質問していいですか?」と言ってきたので、脳活動を活性化する観点での朝食の重要性を少しだけお話しました。
すると、この質疑をきっかけに食事に関する質問が続々と続き、一時は何とほとんどの聴衆が挙手する状態に!
まるで幼稚園か小学校低学年のクラスのような積極的な全員挙手の風景は、日本の高齢者対象の講演会ではなかなか見ることができません。これも外国ならではの体験です。
先述の通り、講演時間が40分で短めだったため、食事のパートはあえて今回の講演には入れなかったのですが、改めて食事に関する関心がかなり高いことを認識しました。
シンガポールにない日本の食事と食生活は大きな潜在需要がある
シンガポール人は一般に外食が多く、ホーカーセンターと呼ばれる屋台やフードコート、レストランなどで済まし、自炊をあまりしない傾向があります。
私も今回の滞在中に何度かそうしたところで食べましたが、どうしても油っこい中華系の食べ物が多く、バランスの取れた和食に慣れている日本人にはなじみにくい面があります。
シンガポールで日本食の人気が高い背景には、こうした事情もあると思われます。ただし、もともと価格は高めで、インフレでさらに高くなっています。
それでも、所得水準の高いシンガポール人は躊躇なく選択しているようです。(超円安の今は日本人にはとても割高です。参考までに現地の価格例を次に示しました。ちなみにこれは健康的な食事の例ではありません!!)
現地の居酒屋でラーメン、餃子、キリンビール小瓶を注文(写真)
高齢化が進むシンガポールでは、これからますます健康によい食事の需要が増えていくので、現地にまだ存在しない日本の食事と食生活は大きな潜在需要があることを改めて感じました。
余談ですが、シンガポール社会科学大学は、6年前に設立された新しい大学で、生徒の半分は中高年の社会人。仕事をしながらパートタイムで教育を受け学位が取れるというのが売りとのこと。
日本で言う「リスキリング」で、これも政府による少子高齢化対策の一環です。
個人のスマート・エイジング実現に必要なことは何か、それを支援する商品・サービスの事例と、それらを生み出すために何が必要かについてお話します。