携帯電話による独居高齢者見守り実験の意義

スマートシニア・ビジネスレビュー 2011年12月21日 Vol.171

「つながりほっとサポート」を活用した高齢者の見守り実証実験

1214日、社会福祉法人座間市社会福祉協議会は、NTTドコモのらくらくホンベーシック3で利用できるサービス「つながりほっとサポート」を活用した高齢者の見守り実証実験を行うと発表した。

私は、今回の実証実験には、①従来「個人レベル」にとどまっていた携帯電話による見守りサービスの、「地域コミュニティ」レベルへの適用、②「通信インフラ」として定着した携帯電話網の、「高齢者見守りインフラ」としての活用、の二つの意義があると考える。

「つながりほっとサポート」では、自分の携帯電話の利用状況をあらかじめ指定した「つながりメンバー」へ伝えることができる。ここで、利用状況は、歩数計の歩数、携帯電話の開閉回数、電池残量やカメラの利用といった間接的な情報の形で「つながりメンバー」と共有される。「つながりメンバー」とは、自分がつながりたい人で、通常は子供、孫、親しい友人などが対象となる。

ただし、今回の実験では、座間市の高齢者を「支援対象者(見守られる人)」とし、「つながりメンバー」を「支援者(見守る人)」として公募し、実験するとのことだ。

昨年夏、猛暑で都市部を中心に独居高齢者の孤独死が多数発見されたことから、見守りサービスに対する社会的ニーズが一段と高まった。しかし、こうしたニーズの高まりにもかかわらず、サービスの提供形態やビジネスモデルに課題があり、なかなか普及していないのが現状だ。

従来の高齢者見守りサービスの課題と今回の改善策

従来のサービス形態には、マホービンのお湯の水位の変化を検知するもの、ガス使用量の変化を検知するもの、部屋に設置したセンサーで高齢者の位置や周辺環境変化を検知するものなどがある。

しかし、これらの従来サービスには、監視されているという心理的抵抗感が強い、顔色が悪い・元気がないなどの体感情報が検知できない、利用料が高く、加入手続きが面倒、などの課題があった。

「つながりほっとサポート」は、こうした課題を次の通り改善したものである。

1.監視されているという心理的抵抗感を改善

高齢者が日常的に携帯電話を利用すれば、特別な操作も不要で、携帯電話の歩数計の情報などの「間接的な」利用情報を相手方に知らせるという手段をとった。

従来サービスがセンサー等による高齢者の状態のモニターに力点を置いていた。これに対し、「つながりほっとサポート」は、高齢者との会話のきっかけづくりに力点を置いている。携帯電話の強みを十分に活かしたサービスと言えよう。

2.センサーではわからない体感情報を直接確認

赤外線センサーなどを用いたものでは、親が動いているかどうかを機械的に確認するだけだった。これだと、顔色が悪い、元気がない、風邪っぽい、などの体感的な様子はわからなかった。

これに対し「つながりほっとサポート」では携帯電話を利用しているので、必要であれば、すぐに相手先に電話をかけ直接様子を確認できる。私自身も実家の老親と時々電話で話をするが、声の調子を聴けば、親の健康状態が大体どの程度なのかはわかる。

3.低価格・サービス申し込みの敷居を低く

従来サービスでは、センサー利用型の場合、申込時に数万円の初期費用がかかるのに加え、月額千円から千五百円程度の利用料がかかる。また、申し込みの際に設置工事が必要なことも利用の敷居を高めていた。

これに対し「つながりほっとサポート」では、携帯電話への加入と同時に申し込むことで、初期費用なし。月額使用料は税込わずか105円と低額で、工事も不要である。

年金収入依存の高齢者にとって、価格の安さは極めて重要だ。こうした低価格が可能なのは、通信インフラとして確立した携帯電話網を活用するからである。

本社会実験を機に、全国各地への普及が進み、独居高齢者の孤独死という寂しい事故が少しでも減ることを祈りたい。