スマートシニア・ビジネスレビュー 2011年6月20日 Vol. 154
6月14日に私が特任教授を務める
東北大学加齢医学研究所スマート・エイジング国際共同研究センターで新しい事業「スマート・エイジング・スクエア」がスタートしました。
第一弾として、サーキットトレーニングが認知機能に与える実証研究を、産学連携による共同研究としてカーブスジャパンと行うことになりました。
国立大学において地域住民の皆さんに日々の生活で心身の健康を維持・向上する機会を提供しつつ、住民と直結した研究開発環境を構築する仕組みは、これまでにない初めての試みとなります。
14日はセンター長の川島教授、カーブスジャパンの
坂本社長はじめ多くの関係者が集まり、
シンプルですが和やかな雰囲気での
セレモニーとなりました。
企画に関わった私が言うのも何ですが、
国立大学の研究所のなかに
女性専用フィットネスがあるという風景は、
正直かなり異色です。
色とりどりの風船や折り紙、女性たちの写真で
明るく可愛らしく飾られたフィットネスジムは、
およそ国立大学の研究所に似つかわしくありません。
しかし、似つかわしくないと思えるのは
従来の価値観で眺めているからです。
私は、この新しい光景を見て、
6年前に品川の下町、戸越に
日本一号店が開いた時のことを思い出しました。
私はアメリカで実際の店舗をいくつも見ていたので
想像がつきましたが、初めて見た多くの人からは、
「こんな、“しょぼい”ジムで大丈夫なんだろうか」と
不安の声が上がったものです。
しかし、それから6年が経ち、
日本におけるカーブスは1000店舗を超え、
会員数は36万人を超えるまでに成長しました。
人は前例のない新しいものを見ると不安になります。
その理由は、前例がないがゆえに、
どうなるか想像がつかないからです。
スマート・エイジング・スクエアは、
超高齢国家・日本の国立大学として、
世界に先駆けて新しい研究領域を開拓するために
戦略的に始めた事業です。
だから、違和感があって当然なのです。
過去24年間、新事業の企画・立ち上げに
取り組んできた私の経験では、
新しい試みを始めると、必ず関係する組織同士に
摩擦が起きることが身にしみて分かっています。
同時に私は、こうした摩擦が
イノベーションのための「生みの苦しみ」
であることも分かっています。
この苦しみは時に辛く、耐えがたいものがあります。
一方で、それを乗り越えた時には、
「あの頃は苦しくて大変だったね」
と笑って思い出話にできる喜びもあります。
私の尊敬するアメリカ人の引退した経営者が、
いつも私にこう言います。
「ミスター村田、アメリカの強みの源泉は
どこにあるか知っているかい?
それは世界中から移民が来ることだよ。
イノベーションと言うのは、
異質なものがぶつかる所で生まれるんだ。
だから、日本も移民を受け入れた方がいい」
日本についてのくだりは別にしても、
異質なものがぶつかる所で
イノベーションが生まれるという意見には
私も100%賛成です。
震災復興のシンボルの一つとして
本事業が新たな産学連携の在り方に
示唆を与えることでしょう。
参考情報
東北大学プレスリリース
スマート・エイジング・スクエア事業の開始
スマートシニア・ビジネスレビュー 2005年7月4日 Vol. 71
カーブス日本第一号店体験記
多様性市場で成功する10の鉄則
「不」の発見者 - 飽和市場の隣には新たな「不」が出現する