スマートシニア・ビジネスレビュー 2011年8月17日 Vol.160
現役サラリーマンの退職後の大きな変化は「情報が減ること」
現役サラリーマンの退職後の大きな変化は「情報が減ること」だ。特に勤務先経由で当たり前のように与えられていた種々の情報がばったり途切れる。わずらわしさが無くなる反面、これで退職したことを実感する。
そこで、退職者にとって重要になるのは勤務先以外からの「情報収集策」だ。専業主婦の場合は、かなり以前に退職を経験しているので、近所づきあいやPTAの集まりなど地域に人的ネットワークをもっている。
また、女性は一般に友人・知人を情報収集チャネルとして持っていることが多い。退職後も一緒に旅行に行ったり、食事をしたりと何かと情報交換機会を持っている。
これに対して、通勤族だったサラリーマン男性の場合は、こうした人脈が不足気味だ。情報源の中心が新聞や雑誌だけの人も少なくない。
離職するまでに自分で「情報発信できる仕組み」をつくること
では、どうするか。私がお勧めしたいのは、離職するまでに自分で「情報発信できる仕組み」をつくることだ。なぜなら、情報というのは、情報発信している人のもとに集まりやすいからだ。
だから、ある情報が欲しければ、それに「関連する情報」を発信するのが効果的である。具体的にはネットの活用が有効だ。ブログを活用して自分のホームページを開設する、メールマガジンを発行するなどして自分から情報発信することだ。
この際のポイントは、①読み手が読みたくなる内容にする、②他では入手しにくい独自の情報を発信する、の二点である。
年配者のホームページの特徴は、自分史や自分が撮った写真を多いことだ。しかし、こうしたページは、本人は楽しいかもしれないが、他人からは継続して見られることはほとんどない。自己満足なホームページほど他人にとってつまらないものはないからだ。
それよりも、読み手にとって役に立つ内容で独自性のあるものが好まれる。
退職後の最大の情報収集戦略は「情報発信」
こういうと「これだけ情報が氾濫しているなかで、他にない独自の情報発信なんて難しい」と思われるかもしれない。
しかし、実はそう難しくないやり方がある。それは自分自身がこれまで長年やってきた仕事や、好きで何年も取り組んでいる趣味などをテーマにしてホームページやメールマガジンにすることである。
私が言いたいのは、自分自身が興味をもって取り組んでいるテーマこそが情報発信に最適だということだ。なぜなら、自身の体験にもとづく情報は説得力があり、読み手に迫力が伝わるからだ。
そして、そのテーマに共感した別の人から連絡が来て新しい友人関係に発展する可能性も大きいからである。(これを以前「知縁」=知的好奇心がつくる縁と名付けた)経営者あるいは管理職としてそれなりの専門知識を蓄積してきた人にとっては、こうしたやり方が取り組みやすいはずだ。
他人から情報が欲しければ、まず自分から出す。退職後の最大の情報収集戦略は「情報発信」なのである。
したがって、商品提供者はこうした個人の情報発信を支援するツールやサービスを提供すれば売れるのだ。その例がスマートフォンやフェイスブックだ。世界中で7億5千万人が利用しているフェイスブックも日本ではようやく4百万人を超えたばかりである。
しかし、今年は利用者が急増している。かくいう私もその一人だ。この新しい仕組みの特徴は、顔写真つきの実名でのやりとりが原則で、相手方との交流が「いいね!」というボタンのやりとりで簡単にできることだ。
従来のホームページでは、自分の好きな写真を掲載しても、誰が見ているのかもわからなかった。ところが、フェイスブックでは、気のきいた写真を載せると、それを見た人からすぐに反応が得られる。
しかも、誰が反応したのかがわかる。コメントも簡単にでき、それがきっかけで対話が起こりやすい。写真好きな年配者も自己満足にさいなまれずに済む。
フェイスブックは時間に余裕のできる退職者にこそ最適なマイメディアだ。 退職者だけでなく、退職予備軍の方も今から取り組んでおいて損はない。