シニア層はお金持ちか?資産・所得からみる実態

Clinic ばんぶう8月号 連載 データから読むイマドキ「シニア」の実態 第1回

日本医療企画_ばんぶう8月号_表紙日本医療企画が発行する開業医向け雑誌「Clinic ばんぶう」で新連載が始まりました。開業医の方が読者の雑誌に連載するのは初めてですが、編集部からの強い要請によりお受けすることにしました。

開業医の先生方はほとんど終日クリニックで仕事をしているので、学会等がないとなかなか外部の情報を入手しづらいのかもしれませんね。何かのお役に立てれば幸いです。

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「シニア」は英語のseniorから来たものです。本来は「年長の」という意味しかなく、特定の年齢を示す言葉ではありません。本連載では60歳以上の人を「シニア」と呼ぶことにします。

2012年総務省統計局「家計調査」によれば、1世帯当たり正味金融資産(貯蓄から負債を引いたもの)の平均値は、70歳以上で2,101万円と最も多くなっています。2番目が60~69歳で2,052万円、3番目が50~59歳で1,139万円、4番目が40~49歳で55万円と2桁下がります。39歳以下はマイナス、つまり貯蓄より負債の方が多いのです。また、年齢階級別の持家率で見ると、60歳代、70歳代ともに92%近い持家率となっていて、他の年齢層よりも圧倒的に高くなっています。

このようにシニア層は、他の年齢層に比べて平均的には資産持ちです。この理由から「シニア層は他の年齢層よりお金持ちである」という俗説がはびこってしまうのです。

ところが、同年の厚生労働省「国民生活基礎調査」によれば、世帯主の年齢階級別の「年間所得」(図1)は、50~59歳で764.3万円と最も多くなっています。2番目が40~49歳で669万円、3番目が30~39歳で547.8万円、4番目が60~69歳で541万円、5番目が70歳以上で403.8万円となっています。資産持ちの60歳代・70歳代は、所得では4番目と5番目なのです。この主な理由は、60歳代・70歳代は多くの世帯主が退職し、主たる収入源が年金だからです。

さらに、年間所得の金額分布を見ると、世帯平均値は300.5万円、世帯中央値は242万円で、ピークが100万円から200万円の間にあります。実は65歳以上の世帯の79.7%が年間所得400万円以下なのです(図2)。

このように、シニアの資産構造の特徴は「ストック・リッチ、フロー・プア」です。これは和製英語で、英語ではassets rich, cash poor(アセット・リッチ、キャッシュ・プア)と言います。

一般に将来に対する明るい展望が見られないと思いがちなことから、シニアは3K不安(健康不安、経済不安、孤独不安)が強いのです。このため、いざ高額出費が必要という時のために備えてお金を蓄える傾向が強い。そして、普段の生活においては倹約志向が強く、無駄なものにはあまり出費をしない消費スタイルの人が多いのです。

シニア一人ひとりの消費行動は多様なので、こうした消費スタイルが全ての人にあてはまるわけではありません。ただ、ほかの年齢層と比較した場合の一般的傾向としては間違いありません。

以上より、「シニア層は、他の年齢層よりお金持ちである」というのは正しくないことがお分かりいただけるでしょう。「シニア層は、他の年齢層より資産は多いが、所得は少ない」というのが正しいです。資産が多くても、必ずしも日々の消費が多いとは限りません。これについては次回お話しします。

成功するシニアビジネスの教科書
クリニックばんぶう

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