スマートシニア・ビジネスレビュー 2011年11月10日 Vol.168
団塊世代の退職が本格化すると、
在来線には昼間走る「ゴージャス車両」が復活する、
と予想した。
その予想が現実になった。
クラブツーリズムが国内初の旅行会社専用列車を
この冬にデビューさせることになったのだ。
鉄道での旅が好きな人は、ゴージャスな車両で
ゆったりと景色を楽しみながら移動するのを好む。
ヨーロッパを旅したことのある人は、
鉄道での旅が最高に優雅でリッチな気分になるという。
コンパートメント方式の車両で会話を楽しみ、
風光明媚な景色を楽しみながら、
食堂車では美味しいワインと食事ができる。
日本では、JRが新幹線の普及とともに
ヨーロッパ式のゴージャスな車両を
在来線からほぼ消滅させて以来、
こうした旅のスタイルはなくなってしまった。
実はJRでも「カシオペア」や「北斗星」などの
寝台特急には現在もゴージャスな車両が存在する。
しかし、これらはすべて夜行列車であり、
昼間ゆったりと景色を見ながら走るものではない。
しかし、リタイア・モラトリアム(退職過渡期)の人や
退職した人は、時間に余裕があるので
新幹線で拙速に移動する必要性も薄れる。
だから、昼間の在来線にゴージャス車両を走らせれば、
利用者は間違いなく増えると予想していた。
今も走らせているのは私鉄である。
小田急電鉄の「ロマンスカー」、
東武鉄道の「スペーシア」などがその例だ。
「ロマンスカー」は、新宿から箱根湯本まで走る。
食堂車はないが、一番前の席は視野が広く、
電車の旅の楽しさを感じさせてくれことから
今でも人気がある。
ロマンスカーで箱根湯本まで行き、
そこから箱根登山鉄道に乗ると、
都心からわずか2時間の道のりの間に
日本の景色の美しさを再認識する。
こういう発見は新幹線では絶対に不可能だ。
今回のクラブツーリズム専用列車も、
やはり私鉄である近鉄の協力によるもの。
グリーンを基調とした上質な外装で、
大型の荷物が置けるスペースや
温水洗浄式トイレも設置されている。
車両前方に添乗員や講師が話をする際に使える
専用のテーブルが設置されている。
顧客目線を大切にするクラブツーリズムらしい工夫だ。
プロの講師の説明に耳を傾け、
風光明媚な景色を眺めながらグラスを傾ける
「動くワイン教室」でのワインの味は格別だろう。
列車とは単なる移動手段ではなく、
移動のプロセスを楽しませてくれるもの。
クラブツーリズム専用車両は、
こうした列車による旅の楽しさを
再発見させてくれることだろう。
●参考
リタイア・モラトリアム すぐに退職しない団塊世代は何を変えるか
第II部 リタイア・モラトリアムと解放型消費
第4章 時間解放消費