スマートシニア・ビジネスレビュー 2011112Vol.167

fage中高年を対象に商品・サービスを提示する場合、

特定の年齢訴求が受け入れられる場合とそうでない場合がある。

 

最近の例では、サントリーの化粧品FAGE.が該当する。「まだ50代。ハリさえあれば」「60代、弾むハリ」などと新聞広告やチラシでターゲットユーザーの年齢を訴求し、効能を訴えている。

 

こうした特定の年齢訴求アプローチが受け入れられるのは、

明らかに経済的メリットがあると感じられる場合だ。

 

たとえば、映画や劇場、散髪などのシニア割引が該当する。

JR東日本の「大人の休日」は、運賃割引という古典的な例だ。

 

割引以外の例では、かつてアリコ(現:メットライフアリコ)が発売した

「はいれます」という保険商品がそうだった。

 

一般に年齢が上がると死亡保険は加入しにくくなる。

当時、これが発売されるまで、50歳以上の人が医師の審査なしで

加入できる死亡保険はほとんどなかった。

需要があるのに供給がなかったニッチ市場で大ヒットした商品だ。

 

これらのように該当者にとって経済的メリットが感じられる場合、

特定の年齢を訴求されても受け入れられる。

 

一方、ダメな場合は、「差別的ニュアンス」が感じられる場合である。

たとえば、後期高齢者医療制度がその典型だ。

 

75歳以上に特化し、保険料負担を増したことで、猛反発を受けた。

負担を増したとはいえ、現役世代の負担率3割よりも少なかった。

 

だが、特定の年齢層の負担増というアプローチは、

特定の年齢層への「差別」と見られやすいのだ。

 

そして、化粧品は、これまでのところ、

特定の年齢訴求がうまくいかない例だった。

 

かつて、大手化粧品メーカーが50代以上の女性に訴求して

大キャンペーンを行ったとき、画期的な試みだとして、

多くのメディアに取り上げられた。

 

ところが、肝心の売り上げはさっぱりだった。

特定の年齢訴求が、対象者にとっては、

特定の「ラベル」を張られるかのように思われたからだ。

 

サントリーの事例では、こうした過去をよく研究していると思われ、

いろいろな面で工夫されているのを感じる。

実際にどの程度反応が得られているのか興味深い。

 

一方、大丸松坂屋百貨店が60歳代の女性をターゲットにした

「マダムセレクション」という売り場を始めたらしい。

 

2030歳代に訴求した売り場がうまくいったために

60歳代に対しても取り組むことになったとのこと。

 

だが、売り場での年齢訴求でも、

60歳代に対しては苦戦してきた経緯がある。

こうした過去に学んで周到に取り組み、

前例を覆してほしいと思う。

 

商品の質がどんなに優れていても、

その商品に直接触れてもらえなければ、

その質の良さは感じてもらえないからだ。

 

●参考

 

見込み客には商品を売るな - 「商品」から「商品体験」へ