スマートシニア・ビジネスレビュー 2011年11月2日 Vol.167
特定の年齢訴求が受け入れられる場合とそうでない場合がある。
最近の例では、サントリーの化粧品F.A.G.E.が該当する。「まだ50代。ハリさえあれば」「60代、弾むハリ」などと新聞広告やチラシでターゲットユーザーの年齢を訴求し、効能を訴えている。
こうした特定の年齢訴求アプローチが受け入れられるのは、
明らかに経済的メリットがあると感じられる場合だ。
たとえば、映画や劇場、散髪などのシニア割引が該当する。
JR東日本の「大人の休日」は、運賃割引という古典的な例だ。
割引以外の例では、かつてアリコ(現:メットライフアリコ)が発売した
「はいれます」という保険商品がそうだった。
一般に年齢が上がると死亡保険は加入しにくくなる。
当時、これが発売されるまで、50歳以上の人が医師の審査なしで
加入できる死亡保険はほとんどなかった。
需要があるのに供給がなかったニッチ市場で大ヒットした商品だ。
これらのように該当者にとって経済的メリットが感じられる場合、
特定の年齢を訴求されても受け入れられる。
一方、ダメな場合は、「差別的ニュアンス」が感じられる場合である。
たとえば、後期高齢者医療制度がその典型だ。
75歳以上に特化し、保険料負担を増したことで、猛反発を受けた。
負担を増したとはいえ、現役世代の負担率3割よりも少なかった。
だが、特定の年齢層の負担増というアプローチは、
特定の年齢層への「差別」と見られやすいのだ。
そして、化粧品は、これまでのところ、
特定の年齢訴求がうまくいかない例だった。
かつて、大手化粧品メーカーが50代以上の女性に訴求して
大キャンペーンを行ったとき、画期的な試みだとして、
多くのメディアに取り上げられた。
ところが、肝心の売り上げはさっぱりだった。
特定の年齢訴求が、対象者にとっては、
特定の「ラベル」を張られるかのように思われたからだ。
サントリーの事例では、こうした過去をよく研究していると思われ、
いろいろな面で工夫されているのを感じる。
実際にどの程度反応が得られているのか興味深い。
一方、大丸松坂屋百貨店が60歳代の女性をターゲットにした
「マダムセレクション」という売り場を始めたらしい。
20~30歳代に訴求した売り場がうまくいったために
60歳代に対しても取り組むことになったとのこと。
だが、売り場での年齢訴求でも、
60歳代に対しては苦戦してきた経緯がある。
こうした過去に学んで周到に取り組み、
前例を覆してほしいと思う。
商品の質がどんなに優れていても、
その商品に直接触れてもらえなければ、
その質の良さは感じてもらえないからだ。
●参考