スマートシニア・ビジネスレビュー 2002年7月2日 Vol. 17
米国や欧州には、50歳以上の人で希望の休暇期間と行き先が一致した家族どうしが家を交換するという「シニアズ・ホーム・エクスチェンジ」というサービスがあります。利用者の多くが、年に3回から4回この仕組みを利用して旅行をしています。
シニアズ・ホーム・エクスチェンジのサービスには、「家の交換」と「オプション付きの家の交換」があります。
前者は、同じ時期に滞在を希望する場所・家がマッチした場合、当事者どうしで交換が行われます。車、ボート、ゴルフカートなど家以外の設備の交換もあり得ます。実際、エクスチェンジ先の車のレンタルを利用する人は会員の57%に上ります。
後者は、居住者が食事の世話や地域の案内を行う、いわば、ホームステイのようなものです。
自分が他の会員の家に興味を持った場合、その逆に他の会員が自分の家に興味を持った場合のみ、シニアズ・ホーム・エクスチェンジは電子メール、ファクス、電話番号を伝え、それから後のコンタクトは当事者同士のやりとりとなります。
利用者側のメリットは大きく二つあります。
第一に、利用者が旅行にかかる費用を節約することができること。実際、利用者の29%が500ドルから1000ドル、36%が1000ドルから2000ドル、32%が2000ドル以上もの節約ができたと報告しています。このシステムは特に長期の旅行者に向いており、利用者の74%が2週間以上、25%が1ヶ月以上交換先の家に滞在しています。
第二に、ホテルでの宿泊では体験できない他の国の日常生活を体験できること。パック旅行の添乗員でも知らないような地元のお店、レストランなど穴場の情報を知ることができます。
会員になるとインターネットで一度に、そしてリアルタイムで他の人の情報を取り出すことができます。例えば、家の部屋数、家具などの立地環境のほか、周辺の観光スポットに関する詳細も確認することができます。
欧米の留守宅交換サービスの年会費相場は平均50ドルから150ドルですが、シニアズ・ホーム・エクスチェンジでは、3年間で60ドルと破格の安さです。
このようなメリットの多いサービスですが、残念ながら日本はまだサービスの範囲に入っていません。日本ではアカの他人と留守宅を交換するという文化がないのが、最大の障壁なのでしょう。
しかし、仲介者(この場合ホームエクスチェンジ)が十分な信用力を持ち、会員に対する強いコントロールが可能ならば、サービス成立の可能性はあるでしょう。
というのは現状のホームエクスチェンジがうまく機能している大きな理由として、分別のある50歳以上の人に限定していることがあるからです。
今回のワールドカップで多くの地方の市町村が各国のチームを受け入れたおかげで、東京以外の日本の姿を多くの外国人に伝えるよい機会となりました。
外国人をホストとして受け入れることで、単に海外旅行に行くだけでない中身の濃い異文化体験ができることは短期間の駆け足観光旅行に飽きたシニア層にとっても有意義な仕組みとなるのではないでしょうか。