健康指標の見える化で安心して旅に出かける

3月4日 クラブツーリズム 旅と人生を楽しむ スマート・エイジング術

なぜ、「健康指標」が必要か

市販の体組成計の例

連載第9号で、脳卒中が要介護状態になる原因の最上位で、その多くは「生活習慣病」がもとだとお話ししました。

生活習慣病は、糖尿病・脂質異常症・高血圧・高尿酸血症など、生活習慣が発症原因に深く関与している病気の総称です。この改善のためには過度の飲酒、栄養の偏った食事、運動不足といった「悪しき生活習慣」を「よい生活習慣」に変えることが重要です。

しかし、実際のところ、たとえ「よい生活習慣」を知っていても、自分の「悪しき生活習慣」を改善できるとは限りません。

私たちが生活習慣を変えるには、まず自分の現在の状況を客観的に評価したうえで、現状どの程度、病気になるリスクが高いのかを認識する必要があります。

現在の状況を客観的に評価するための尺度が「健康指標」です。これには体重・BMI(Body Mass Index)、血圧、血液検査での数値、肺機能、心電図など様々あります。

現在は市販の体組成計で体重やBMIだけでなく、体脂肪率、筋肉量、内臓脂肪レベル、基礎代謝量、推定骨量などが計測できます。また、血圧も同様に市販の血圧計で計測できます。

体組成計と血圧計はスマホとデータ連携するのがよい

一方、こうした体組成計や血圧計をすでにお持ちでも、毎日計測していない、あるいは計測しても何も記録していないという方もいらっしゃいます。これでは宝の持ち腐れです。

また、毎日計測しているが、紙へ記録しているという方もいらっしゃいます。余談ですが、私の知り合いのなかに血圧計で計測したデータを新聞折り込みチラシの裏に書いている人がいました。節約精神旺盛なのは良いのですが、このような方法ではせっかく計測したデータが有効に活用できません。

結論から言えば、市販の体組成計と血圧計はブルートゥースという無線規格でスマートフォンに記録できるものを使うべきです。この方法がよい理由は次の通りです。

1. 計測値を紙等に記録する手間が省け、データが長期に保存できる。
2. 記録したデータの時系列トレンドをグラフで見ることができる。
3. 異なる健康指標データのトレンドを見ることで、相互の連関がわかる。

1については、「毎回都度、紙に記録する方が“計測を実行している感じ”がしていい」という意見もあります。血圧記録などは専用の記録帳が薬局などに無料で置いてあることもよくあります。

しかし、こうした紙への記録だと、計測を継続すると何冊もの記録帳が必要になります。何よりも簡単にグラフ化できないため、データのトレンドが把握しづらいのが難点です。

2については、スマホのアプリで蓄積した計測データを時系列グラフで見ることができ、過去1か月間、3か月間、半年間などのトレンドが簡単に確認できます。

これにより、例えば体重や血圧の目標値を定めて、目標値を達成するために「今日はもう30分歩こう」などといった生活習慣を変える行動がとりやすくなります。

健康指標を毎日確認できると急激な変化を予防できる

3については、例えば体重が増加傾向の時に、血圧も増加傾向になる場合があります。このような場合、背景として仕事や人間関係でストレスがかかり、つい食事の量が増えたり、酒量や間食が増えたりしていることがよくあります。

毎日データを把握していないと、やりたい放題、飲食をして急激に体重増、結果として血圧増につながり、糖尿病など生活習慣病につながる可能性が大です。

異なる健康指標データのトレンドを毎日見ることで、「これ以上大きくなるとやばいな」「危ない兆候だな」といったセルフチェックができるようになります。

以上のとおり、自分の体の健康指標を「見える化」して、日常的に把握しておくと「ある日突然、高血圧になった」などの急激な変化が起きにくくなります。こうして自分の体の状態を常に数値で把握できていれば、旅に出かける時も安心です。