12月17日 京都大学大学院医学研究科
12月17日、京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻社会疫学分野において、The Smart Ageing Way: Japanese experience toward the super-aged societies(スマート・エイジングという方法:超高齢社会に向けた日本の経験)と題した英語の講義を行う機会をいただきました。
京都大学大学院医学研究科ではグローバルヘルス分野における人材育成に資する目的で、「社会起業と公衆衛生Social entrepreneurships and public health」と題する英語の講義を今年度から開始しています。その目的は、社会起業に対する理解が、わが国の公衆衛生分野で著しく立ち遅れている現状に鑑み、その鏑矢とすることにあるとのことです。
私が今回この講義を担当するきっかけは、2012年12月に香港で行われたSocial Enterprise Summitにおいて講演したことです。
香港は高齢化率の面では14%程度と比較的若い国に見えますが、出生率が1程度で、少子化が日本以上に進展しており、近い将来急速に高齢化が進むと見られています。しかし、政府の高齢化対策は脆弱であり、NPOなどの民間セクターの役割が重要となっています。
私は10年以上前から「高齢社会の諸問題の解決は、極力、税金や補助金などの国費投入でなく、健全な収益事業、つまり「ビジネス」で行うべき」と主張してきました。なぜなら、日本のような経済成熟国・高齢国は、国費投入型の社会保障政策では、もはや、財政的にやっていけないからです。
香港での講演の際に、具体的な事例を交えてこういう話をしたところ、懇親会でヒジャブをかぶった一人のイスラム女性が名刺交換に近寄ってきました。聞けば、イエメンから京都大学医学部に留学していて、社会起業に興味があり、しかも私の話を聴きたくて、わざわざこの香港のSocial Enterprise Summitにやってきたとのこと。
私は、恥ずかしながら当時はイエメンという国がどこにあるのかも知りませんでした。しかし、イエメンという国の将来を考え、イエメンの公衆衛生を向上させるために、社会起業的な手法を学びたいという彼女の熱意に心を打たれ、それ以来折を見て連絡を取り続けていました。そして、今回の講義を行うことになったのです。
先週に引き続き京都を訪れることになりましたが、多くの訪問者と異なり、観光する暇は今回もたぶんないでしょう(涙)。しかし、京都大学で学ぶ意欲旺盛の外国人留学生たちとのディスカッションを楽しんで来ようと思います。