穴吹コミュニティ さーぱすねっと 人生100年時代のスマート・エイジング
株式会社穴吹コミュニティが運営する入居者専用インターネット接続サービス「さーぱすねっと」に「人生100年時代のスマート・エイジング 齢を重ねても新たなことに挑戦できる秘訣」と題した小論が掲載されました。以下、その全文です。
高齢になると新しいことがおっくうになるのは作動記憶が減るため
一般に高齢になるにつれ新しいことに取り組むのがおっくうになります。原因は、私たちの認知機能の一つ、「作動記憶(ワーキングメモリー)」の容量が加齢と共に減ることにあります。
作動記憶とは、短い時間に情報を保持し、同時に処理する能力のことを言います。この容量が減ると、新しいことの理解に必要な時間と労力が増えます。このため高齢になると新しいことの学習が面倒くさくなるのです。
新型コロナウイルスのワクチン接種予約では、高齢者の場合、ネットより電話が圧倒的に多かったようです。「新しいこと=ネットなどデジタルサービス」の利用がおっくうなため、「昔からなじんだこと=電話」を好むからです。
高齢になっても新たなことに取り組む人は作動記憶が維持されている
一方、最近高齢になっても新たなことに取り組み、活動的に過ごす人も目につきます。81歳でiPhoneアプリ「hinadan」を開発し、米アップルのティム・クックCEOから「世界最高齢のアプリ開発者」と呼ばれた若宮正子さんは88歳。日本最高齢のフィットネスインストラクターとして活躍中の瀧島未香さんは92歳です。
この二人のように、高齢になってからも新しいことに取り組む人は、若い頃から好奇心が旺盛で、行動的な人に多く見られます。
若宮さんがパソコンを始めたのは定年退職後です。人とおしゃべりをするのが好きな彼女は、パソコン通信を始めるためにパソコンを習ったとのことです。
瀧島さんもスポーツジムに通い始めたのは65歳。70歳で水泳、74歳からフラダンス、78歳からヒップホップをそれぞれ始めています。
実はこうした行動スタイルを持つ人は、先に述べた作動記憶の容量が若い頃と同等に維持されている可能性が高いです。
いくつになっても作動記憶は脳トレで維持拡大できる
しかし、このような行動スタイルがない人でもあきらめることはありません。実は作動記憶量は、「スパン課題」や「Nバック課題」といった脳の作動記憶トレーニングによって拡大できることが東北大学の研究で明らかになっているからです。
スパン課題とは、例えば数字を1、7、8、2…5と一つずつ見せたり聞かせたりした後に、覚えた数字をそのまま提示した順番で答えてもらったり、見たり聞いたりしたものとは逆に答えてもらったりする課題です。
Nバック課題とは、例えば数字を、1、7、8、2…5と一つずつ見せたり聞かせたりしている最中に、2バック課題では3番目に8が出てきた瞬間に、その2つ前に出てきた数字である1と答え、4番目に2が出てきたときには、同じくその2つ前に出てきた数字7と答えるものです。
興味深いことに、このトレーニングを続けると、脳の実行機能、予測や判断力、集中力も向上し、仕事や勉強の効率が上がるなど、さまざまな効果が現れることもわかっています。
作動記憶トレーニングを含む脳のトレーニングに興味のある方は、任天堂「脳を鍛える大人のSWITCHトレーニング」または㈱NeU「Active Brain Club」を試してみて下さい。どちらも東北大学が監修しており、トレーニング効果が科学的に検証されています。
脳には「可塑性(かそせい)」という自らが変化する性質があり、加齢により認知機能が衰えたとしても、鍛えることによって機能回復できる可能性があります。
いくつになっても新しいことに挑戦するのに遅過ぎることはありません。
人生100年時代を乗り切るには、加齢(エイジング)に伴う様々な変化に対する身体と心の“適応力”が必要。本書のテーマは「いかにして ”加齢適応力”を身につけるか」です。超高齢社会での〝賢い〟歳の重ね方の指南書。