スマートシニア・ビジネスレビュー 2016年11月30日 Vol.221
さる11月13日に東京・品川で日経スマート・エイジング・フォーラムが開催された。講演者として、そのアンケート結果を拝見する機会があった。大変興味深い内容があったので私が印象に残った点を少しだけご紹介したい。
まず、「健康寿命延伸」のために、あなたが日ごろ実践していること、気をつけている ことはありますか、という問いに対して非常に多くの人が「ある」と答えていた。
「健康寿命延伸」という言葉は一般にはあまり知られていないとも言われる。だが、本フォーラム参加者の「健康寿命延伸」に対する意識はかなり高いと言える。
私は、シニアの生活不安のトップは「健康不安」だとかねがね主張しているが、今回の結果はその不安の裏返しとも言えよう。
次に、「ある」と答えた人に「健康寿命延伸」のために日ごろ実践していること、気をつけていることを挙げてもらったところ、かなり多くの人が「ウォーキングや運動に取り組んでいる」と回答していたようだ。
私の講演でもスマート・エイジングのための秘訣として真っ先にお話ししたのは「有酸素運動」で、ウォーキングはその代表だ。実際、早朝や夜にウォーキングする多くのシニアの姿を目にするが、今回の参加者でも実践している人がかなり多いようだった。
一方、スマート・エイジングのために秘訣として重要な脳のトレーニング、いわゆる「脳トレ」の実施を講演でもお話ししたが、ウォーキングの場合と異なり、脳トレに取り組んでいると回答した人は非常に少なかったようだ。
つまり、今回のような「健康寿命延伸」に対する意識がかなり高い母集団でも、脳トレを日々実践している人はごく少数にとどまっていたようだ。これは一体どうしてだろうか?
私はこの最大の理由は「脳トレを実践してみたいが具体的な手順・方法を知らないこと」ではないかと思う。
実際、私の他の講演機会でも「脳トレの具体的な方法を教えてほしい」といった質問を受けることが多い。このため、最近は具体的な手法をいくつか講演のなかでお伝えするようにしている。
スポーツジムや各種クラブなどの運動をする環境や受け皿はすでに世の中に沢山ある。そうしたところに行かなくてもウォーキングなら、手軽にすぐにでき、効果を体感しやすい。
しかし、脳トレはウォーキングに比べるとそう単純ではない。その理由は、そもそも何をどうすれば脳のトレーニングになるのかがよくわからないことだ。加えて、自分で実施する脳トレの効果を自分で見ることができず、かつ、体感もしづらいからだ。
巷には脳トレの真似事、いわゆる「なんちゃって脳トレ」が沢山見られる。科学的理論に基づかず、エビデンスが希薄にも関わらず、脳トレや認知症予防を謳っているものだ。
そうした「なんちゃって脳トレ」ではなく、科学的根拠に基づき、しっかりした理論に裏付けられた「真の脳トレ」を知りたい、実践したい。
今回のフォーラムでの講演でそうした真摯な切望の声を強く感じた次第だ。