スマートシニア・ビジネスレビュー 2016年9月14日 Vol.220
自宅の空き部屋を提供する「ホスト」と宿泊を希望する「ゲスト」を、ネットで仲介するサービスで急成長中のAirbnb(エアビーアンドビー)が日本を含む40か国、約38,000人のホストの調査を実施、国内シニア・ホストに関する調査結果を発表しました。大変興味深い結果なので、今回はその要点をご紹介します。
要点1:国内のシニア(60歳以上)ホスト数が前年比235%の伸び、年代別で最も成長率が大きい。
国内のシニア・ホストは約900人で、男女比は6:4。その36%が退職者あるいは無職の方です。ホスト数の成長率は、高年齢になるほど大きくなる傾向にあります。
要点2:シニア・ホストの割合は、地方都市で高い。
シニア・ホストの割合の高い都市ランキングは次の通りです。
1位:和歌山県田辺市
2位:静岡県伊東市
3位:滋賀県大津市
4位:群馬県高崎市
5位:奈良県奈良市
6位:神奈川県小田原市
ちなみに、1位の田辺市はユネスコの世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に含まれる街。2位の伊東市は富士箱根伊豆国立公園の一部で、温泉地としても有名。3位の大津市は有名な比叡山延暦寺があるとともに、京都に近いベッドタウン。
4位の高崎は群馬県最大の都市ですが、一昨年世界遺産に指定された富岡製糸場に近い場所。5位の奈良市は言うまでもない観光地。6位の小田原は箱根に近い場所です。
ランキング上位の地方都市を眺めると、世界遺産や温泉、有名な観光地のそばという共通点があります。また、こうした地方都市では高齢化率が高く、シニア人口も多いため、シニア・ホストも多くなると言えます。
見方を変えれば、これらのランキングにまだ入っていない観光地や温泉地のそばの地方都市で今後シニア・ホストが増加する可能性が十分にあると言えましょう。
要点3:シニア・ホストでは自宅空き部屋などの個室の提供が70%で、他の年代のホストに比べ、その割合が高い。
子育てが終了し、いわゆる「空の巣症候群」になった方、あるいは配偶者と死別し、一人暮らし世帯になった方などがホストになっている例が多いようです。
シニアがホストになるということは、自身の遊休資産の活用で、年金以外の副収入を得られ、経済的に余裕ができます。また、ホストとして国内外からの観光客と交流することで、孤独の解消になり、精神面の健康増進につながります。
これまで拙著等で何度もお話ししているように、シニアの三大不安は、健康不安、経済不安、孤独不安です。シニアがホストになることで、この三大不安を解消し、生活を豊かにできると考えられます。
要点4:シニア・ホストの70%がゲストから最高評価(星5つ)を獲得しており、年代別で1位となっている。
日本最高齢ホストの暎子さんは「Airbnbのゲストはお客様という感じではなく、旧友が遊びに来てくれるといった感覚でお出迎えしており、ゲストが帰られた後には、どんどんお友達が増えていることに歓びや楽しみを感じるようになっている」と話しています。
また、「特におもてなしに大きな気を使っている訳ではなく、国籍や年齢に関係なく、自分も皆さんと一緒に楽しい会話に参加し、全ての方とお友達のように接している」とのこと。
こうした自然体の「普段着のおもてなし」を受けられ、現地の日常生活が体験できることがゲストにとって大きな魅力なっているのです。
私も先日アメリカの地方都市でB&B(ビーアンドビー)に宿泊した時、通常のホテル宿泊とは異なる現地の日常生活を体験でき、とても新鮮でした。
「シェアリング・エコノミー」の代表として挙げられるAirbnbは、超高齢社会における空き家・空き部屋などの有効活用に加えて、シニア層の新たな役割つくりという付加価値を生む仕組みでもあります。
旅館業からの反発の多い民泊ですが、政府は早急に民泊新法を制定し、既存のホテル・旅館との棲み分けをして、民間活力による空き部屋とシニア層という二つの遊休資産の活用を支援していただきたいと思います。
民泊で収入を得る米国のシニア 日本でも可能性
Airbnb(エアビーアンドビー)プレスリリース
成功するシニアビジネスの教科書