ポケモンGOとシニア市場の可能性

スマートシニア・ビジネスレビュー 2016年8月4日 Vol.219

pokemon-go7月22日に日本でもリリースされたスマホゲーム「ポケモンGO」は、リリース直後の熱狂的なブームは一段落しました。しかし、ビジネスとしての真の発展は、むしろこれからが本番でしょう。

ポケモンGOユーザーにおけるシニア層の割合は現時点では非常に少数派です。しかし、私が見る限り、このゲームの仕組みはシニア層への親和性が高く、ポケモンGOをトリガーにした新たなシニア市場の可能性を大きく感じます。

そこで、今回はまずポケモンGOの「何」がシニア層にとって相性が良く、メリットなのかについて解説します。

メリット1:外出のきっかけになる

ポケモンGOは、スマホを使って街中でポケモンを捕まえるゲームです。少しレベルが上がると他のポケモンと戦うバトルゲームも楽しめます。

ポケモンを捕まえるために「ボール」などのツールが必要ですが、これは現実世界の街中にある「ポケストップ」と呼ばれるチェックポイントに行くとタダで入手できます。

実はポケモンGOでは、効率的なツール入手のためには、街中を探索するのが最も効果的な仕組みになっています。つまり、ポケモンGOは「外出のきっかけ」になるのです。

「ポケストップ」として多い場所は、公園、神社、駅周辺などの公共の場所です。
特に公園は「ポケモンの巣」と呼ばれ、普通の場所では滅多に見られないポケモンが頻繁に出現する場所で、週末になると多くのユーザーが集まっています。

リリース直後は東京の世田谷公園や名古屋の鶴舞公園などに真夜中にも関わらず大勢の人が集まる光景が見られました。

子供が小さい頃にはこれらの大きな公園へ毎週のように出かけたものの、子供が大きくなるに伴い、徐々に訪れなくなった方も多いのではないでしょうか。私自身もそうでした。

しかし、ポケモンGOのおかげで15年ぶりに所沢航空公園、20年ぶりに大宮公園に出かけるきっかけを得ました。

久しぶりに訪れた公園で、昔子供たちと一緒に遊んだ時のことを思い出しながら、昔感じたものとは異なる新たな魅力を感じることができました。

ちなみに、退職男性の6割強が「自宅引きこもり派」になるというデータがあります(拙著「成功するシニアビジネスの教科書」P.34-35参照)。

よくシニアの方が退職後に必要なことは「きょういく」と「きょうよう」だと言われます。「きょういく」は「教育」ではなく「今日行く」ところ。「きょうよう」は「教養」ではなく、「今日の用(事)」。

ポケモンGOは、「きょういく」と「きょうよう」のための絶好のきっかけを与えてくれます。

メリット2:よく歩くようになる

メリット1に関連しますが、ポケモンGOでは「歩く」と前記の「ポケストップ」に出会ったり、野生の「ポケモン」が出現したりする仕組みになっています。

また、「ポケストップ」で入手できるポケモンの「タマゴ」を孵化装置に入れて2kmから10 km(タマゴによって異なる)歩くと、新たにポケモンが孵化する(得られる)仕組みになっています。

歩くことは、もっとも手軽な有酸素運動です。有酸素運動は、生活習慣病を改善し、要介護になる一番の原因である脳卒中になるリスクを下げます。また、早朝に歩くと脳内のセロトニンの分泌を増やす効果もあります。

シニアの早朝ウオーキング 日光と運動、うつ防ぐ

シニアの方にはすでに早朝あるいは夜に歩いている方も多いのですが、そうした方にも歩く楽しみをさらに増やしてくれます。

メリット3:新たな発見を得られる

ポケモンGOをやると、自分とは異なる視点で「なじみの場所」を眺めることができ、新たな発見があります。

私は自宅のそばに、今まで知らなかった小さな公園があることをつい最近初めて知りました。その公園が「ポケストップ」になっていたからです。

ポケモンGOを製作したアメリカのナイアンティック社の社長は「アメリカには人が誰も行かないような公園や空き地が沢山ある。そういう場所に人が集まる機会を作りたかった」と話しています。

住み慣れた街でも、知らない場所、気が付かない記念碑などは意外とあるものです。自分の住んでいる街や職場のある街など、ポケモンGOはなじみのある街の新たな見方を与えてくれます。

メリット4:旅行と相性が良い

自分のなじみのある街だけでなく旅行で初めて訪れる場所でも、ポケモンGOは便利なツールになるようです。

日本ではリリース後まだ13日しか経っていませんが、先行する海外では、ポケモンGOを使うことで滞在先周辺にある「隠れスポット」を見つけるのに便利だという報告がいくつか出ています。

たとえば、あるアメリカ人男性がロンドンのキングス・クロス駅近くの、すでに何度も滞在していたホステルに滞在した時、ポケモンGOを持って周辺を探索すると、今まで知らなかった面白い建築物や公園があったことを発見しました。

次にイタリア・シチリア島のパレルモに滞在した時、最初の2日間は自力で街を歩いて回ったが、3日目にポケモンGOを使って歩いてみると、それまで見逃していた彫刻やストリートアートを見ることができたとのことです。

日本の旅行市場はシニア層がけん引しています(拙著「成功するシニアビジネスの教科書」P.29参照)。旅行好きなシニア層がポケモンGOを使うことで、旅の楽しみをさらに深めてくれることでしょう。

以上、シニア層にとってのポケモンGOのメリットを4つ整理しました。

ポケモンGOにトライした多くの方が「これまでただの散歩だったのが『宝探し』に変わった」と語っています。

雪国生まれの私にとって、ポケモンGOは「山菜取り」に似ています。
わらび、ぜんまいなどの山菜取りの楽しさは雪国の方はお分かりでしょう。

目の前にわらびを見つけたと思ったら、すぐそばに別のわらびが、
そのまたすぐ横に別のわらびが見つかる、といった具合です。

百聞は一見に如かず。
まだの方はぜひポケモンGOにトライしてみてはいかがでしょうか。

次回は、もっと詳細なシニア市場としての可能性についてお話しします。