スマートシニア・ビジネスレビュー 2023年11月29日 Vol.239
11月27日に開催された厚生労働省の専門家検討会で、健康づくりのために推奨される身体活動・運動の目安となるガイド案が公開されました。
この知らせは朝日新聞電子版の記事を配信したヤフーニュースがきっかけで、ネット上でトレンドになりました。
身体活動・運動ガイド2023(案)の要点
公開された資料は「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023(案)」。その要点が資料の図3にまとめられています(上の図を参照、出所:健康づくりのための身体活動基準・指針の改訂に関する検討会第3回資料)。
高齢者に対しては、歩行またはそれと同等以上の(3メッツ以上の強度の)身体活動を1日40分以上(一日約6,000歩以上)、筋力トレーニングを週2~3日行うことを目安としています。
ここで、メッツ(METs)とは、安静に座っている状態を1METとして、様々な活動がその何倍のエネルギーを消費するか示した活動強度の指標を表しています。
高齢者以外の成人に対しては、歩行またはそれと同等以上の身体活動を1日60分以上(一日約8,000歩以上)、筋力トレーニングを週2~3日行うことを目安としています。
私は2012年に上梓した東北大学川島隆太教授との共著「年を重ねるのが楽しくなる![スマート・エイジング]という生き方」の第二章 「自分らしく元気にいきいきと過ごす」ための7つの秘訣に〈秘訣その1〉有酸素運動をする、〈秘訣その2〉筋力トレーニングをすると提言し、個人の方を対象にした講演会等でその重要性を何度もお話ししてきました。
当時は有酸素運動として歩行の場合は1日30分以上とされてきました。今回のガイドでは、高齢者に対しては1日40分以上となっています。
拙著から11年が経過しましたが、ようやく国として有酸素運動と筋トレの重要性を具体的な数値を挙げて示したことには大きな意義があると思います。
身体活動・運動ガイド2023(案)策定の背景など
今回のガイド案は、この10年間の科学的知見の蓄積に基づき、2013年に策定された「健康づくりのための身体活動基準2013」を見直して策定されたものです。
現時点では、あくまで「案」であり、最終版ではありません。にもかかわらず、公開したのは、概ねこの方向で行くということでしょう。
また、2013年版で「基準」と銘打っていたのを、今回は「ガイド」とした理由も説明されています。
今回の専門家検討会の名称が「健康づくりのための身体活動基準・指針の改訂に関する検討会」なので、当初は「基準」の改訂を目指していたはずですが、検討会での意見で「ガイド」に変更したものと思われます。
ご興味のある方は、ぜひ、一度ガイド案に目を通してみてください。
健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023(案)
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001171393.pdf
「スマート・エイジング」とは、2006年に東北大学からの依頼で私が提案し、私が所属する東北大学スマート・エイジング学際重点研究センターの組織名にもなっている考え方です。加齢(エイジング、ageing)は、受精した瞬間からあの世に行くまで続き
人生100年時代を乗り切るには、加齢(エイジング)に伴う様々な変化に対する身体と心の“適応力”が必要。本書のテーマは「いかにして ”加齢適応力”を身につけるか」です。超高齢社会での〝賢い〟歳の重ね方の指南書。