スマートシニア・ビジネスレビュー 2022年10月12日 Vol.235
超々高齢社会とは
10月9日開催のMED2022で「超々高齢社会を持続可能にして世界に貢献しよう」というタイトルでお話しする機会がありました。
この「超々高齢社会」という言葉を初めて聞かれた方が多かったようなので、改めて説明します。
「高齢化社会」などの呼び方は、高齢化率(全人口に対する65歳以上人口の割合)の数値によって国連で次の通り定義されたものです。
高齢化率が7%を超えるとaging society、日本語では「高齢化社会」と呼びます。agingというのは、ageという動詞の進行形で「高齢になりつつある社会」という意味です。
高齢化率が14%を超えるとaged society、日本語では「高齢社会」と呼びます。agedとは「高齢になった」という意味なので、aged societyは「高齢になった社会=高齢社会」という意味です。
高齢化率が21%を超えるとsuper-aged society、日本語では「超高齢社会」と呼びます。「高齢社会」よりもさらに高齢になった(super-aged)という意味です。
これらの定義に従うと、高齢化率が28%を超えると別の定義が必要になりそうですが、国連による定義が存在しません。
そこで私が便宜的にultra-aged society、「超々高齢社会」という定義を2019年2月に上梓した「スマート・エイジング 人生100年時代を生き抜く10の秘訣(徳間書店)」で提唱したのです。
人生100年時代を乗り切るには、加齢(エイジング)に伴う様々な変化に対する身体と心の“適応力”が必要。本書のテーマは「いかにして ”加齢適応力”を身につけるか」です。超高齢社会での〝賢い〟歳の重ね方の指南書。
メディア等で時々「超高齢化社会」という表記を見かけますが、“化”がついているのは意味的におかしいことがお分かりいただけると思います。
また、同様に「超々高齢化社会」と“化”をつけるのもおかしな表記となります。
世界中で進むシニアシフト
こうした「社会の高齢化の進展」は、世界的に見ると地域差があります。現時点で最も高齢化が進んでいるのは日本と欧州各国ですが、今後多くの国で「社会の高齢化」が進んでいきます。
実は2030年までにアフリカと中東諸国を除く、世界の大半の国が「高齢化社会」に突入します。ますます混沌とする世界情勢のなかで、予測できる確実な構造的変化は「人口動態のシニアシフト」なのです。
にもかかわらず、私たちはこの「確実な構造的変化」が進行していることを忘れがちです。以前ご紹介した映画「PLAN75」は、「社会の高齢化は止まらない、思考停止に陥るな」という警鐘です。
この映画は「PLAN75」という架空の制度が導入された近未来社会を描いています。ところが、高齢を理由に職場から解雇される場面や、一人暮らしの高齢女性の友人が孤独死をする場面など、制度以外に描かれているシーンのほとんどが、近未来でなく既に今日現実に起きていることばかりです。これが、この映画が単なる近未来のフィクションのように感じられず、描かれている世界が現実感をもって迫ってくる大きな理由です。よい映画というのは、いろいろな解釈が可能な「複線的なメッセージ性」をもっています。そして、見る人間の立場や見るタイミングによって、豊かな想像を掻き立ててくれる力があります。この映画もそうした力をもつ映画だと思います。
「高齢化社会」に突入する国にはロシアや北朝鮮も含まれています。彼らが戦うべきはウクライナやアメリカではなく、社会の高齢化です。戦争をやっている暇はないのです。
日本で本格化した「企業活動のシニアシフト」は、これから他の国でも「人口動態のシニアシフト」につれて一定の時間差をおいて必ず起こります。特に高齢化率の高いヨーロッパでは、近い将来間違いなく起こります。
実はフランス政府は2014年に「La Silver Economie」を国策にすると決定し、世界中を探索した結果、日本がこの分野で一番進んでいると判断し、何度か日本に使節団を送り込んできました。
だから、日本企業はいまのうちに切磋琢磨して、自社の商品・サービスに磨きをかけることです。そうすれば、それらの商品・サービスは、一定の時間差をおいて「人口動態のシニアシフト」に直面する他の国から必要とされるようになるでしょう。
日本におけるシニアビジネスの先駆者である筆者が、過去14年にわたって実際に数多くの案件に直接関わり、悪戦苦闘しながら積み上げてきた多くの実践体験のエッセンス。シニアシフトに取り組む際に留意すべき点や事業成功のための要点を余すところなく伝えるビジネス・パーソンの必読書。韓国・台湾でも出版。