高齢社会の諸問題を解決するために、今企業がとるべきアクション

9月30日 東北大学大学院 経済学研究科シンポジウム

毎年恒例の東北大学ホームカミングデイ経済学研究科・高齢経済社会研究センター主催のシンポジウムで講演することになりました。

シンポジウムは「学術的背景による高齢社会の諸問題」と題して、4つのテーマで行われます。私のテーマは「高齢化と企業の対応」で、事務局からは「高齢社会の諸問題を解決するために、今企業がとるべきアクション」という題目を頂きました。

この題目に対する私の基本的な考え方は、2006年1月に上梓した拙著「団塊・シニアビジネス 7つの発想転換 多様性市場の壁を突き破れ」(ダイヤモンド社)のエピローグに書いています。その抜粋を以下に掲載します。

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時々、「なぜ、『シニアビジネス』という言葉を使うのですか」と尋ねられます。
「シニアビジネス」という言葉は、人によって、いろいろな捉え方をされるようです。

企業の新規事業担当マネジャーの多くは、先細る若年層向けビジネスに代わる新たなビジネスチャンスを象徴する言葉として捉えています。

一方、年配層の多くは、これとは大きく異なるようです。以前「スローネット」という中高年向けのコミュニティサイトで、拙著『シニアビジネス』の書評が次のように掲載されました。

「本書は昨年五月に刊行されており、二〇〇七年問題をテーマにした本では、いわば先駆けといえる。シニア、そしてまもなくその仲間入りをする団塊世代を市場としてとらえたとき、ビジネスを成功させる鉄則はなにか……こういう問いに応える内容だ。シニアを相手にどうビジネスを成功させるかがテーマなので、中高年の読者にとっては本来ならあまり楽しいものではないはずだ。当然、スローな書とは言いにくい。にもかかわらず、あえてここで紹介するのは、これからシニアが取り組みたい『スローワーク』についてのヒントがいくつか示されているからだ。」

この書評での表現は、かなり穏やかですが、年配層のなかには、「シニアビジネス」という言葉に、自分たちが汗水たらして貯めてきた財産を騙し取ろうとする悪どい商売をイメージする人も少なくありません。

しかし、私が「シニアビジネス」という言葉を使う理由は、別にあります。
それは、高齢社会の諸問題の解決は、極力、税金や補助金などの国費投入でなく、健全な収益事業、つまり「ビジネス」で行うべき、と考えているからです。

なぜなら、日本のような経済成熟国・高齢国は、国費投入型の社会保障政策では、もはや、財政的にやっていけないからです。

日本以外の経済成熟国を眺めると、福祉と呼ばれる分野に市場原理がどんどん浸透しています。どの国も国費投入型の社会保障政策がゆきづまっているからです。

国費のもとは、国民の血税と国債、つまり借金です。
借金の先送りは、結局、子孫に膨大なツケを残すだけです。

しかし、次の世代に残すべきは、膨大な借金であってはいけません。
残すべきなのは、いまの世代が出しうる限りの「知恵」なのです。

低成長段階の経済成熟国が、本格的な高齢社会に突入したいま、「税金や補助金投入の福祉」の形ではなく、「健全な収益事業」の形で、従来国費を投入していた分野を極力置き換えていくことが求められるのです。

そのためには、「健全な収益事業」としての質と量全体のレベルアップが必要です。
そのレベルアップのための「知恵」こそ、私たちが次の世代に残すべきものです

「団塊・シニアビジネス 7つの発想転換 多様性市場の壁を突き破れ」(ダイヤモンド社)
東北大学大学院 経済学研究科 高齢経済社会研究センターシンポジウムの案内(参加無料)