図1 大きな声で音読している時

穴吹コミュニティ さーぱすねっと 人生100年時代のスマート・エイジング

株式会社穴吹コミュニティが運営する入居者専用「さーぱすねっと 人生100年時代のスマート・エイジング」に表題の小論が掲載されました。以下、その全文です。

本の黙読、いわゆる読書は脳活動を活性化するか

図2 黙読している時
図2 黙読している時 出所:東北大学加齢医学研究所 川島研究室

大きな声で文章を音読すると大脳の前頭前野(ぜんとうぜんや)を含む脳の多くの部位の活動が活性化することが東北大学の川島隆太教授らの研究でわかっています。図1は大きな声で音読している時の脳のMRI画像写真です。赤い部分が活性化している部位です。

一方、私の講演等でよく尋ねられるのが「本の黙読、いわゆる読書は脳活動を活性化するか」という質問です。結論から言えば、「そこそこ活性化」します(図2)。

ただし、図1と比較すると、音読に比べて活性化する脳の部位が少なくなっていることがわかります。音読は黙読に比べて、より多くの脳の部位を使っているためです。

また、音読の際にできるだけ「速く」読むと、さらに脳の多くの部位が活性化することもわかっています。

まとめると、黙読<音読<大きな声で音読<大きな声で速く音読、の順に脳活動を活性化する度合いが強くなります。

私の講演会では、参加者の皆さんに大きな声で速く音読する体験をしてもらっています。体験した方々からは「脳がすっきりした」などの声がよく聴かれます。

ユーチューブ(YouTube)の視聴は脳活動にどう影響するか

図3 テレビを視聴している時
図3 テレビを視聴している時
出所:東北大学加齢医学研究所 川島研究室

動画サービスのユーチューブは、パソコンやスマホがあれば誰でも手軽に視聴できるため、コロナ禍で自宅滞在時間が増えたのをきっかけに、視聴者数と一人当たりの視聴時間が大幅に増えました。

ユーチューブ視聴は、脳科学的にはテレビ視聴とほぼ同じ活動です。このためテレビ視聴時(図3)と同様に、ユーチューブ視聴時にも前頭前野に「抑制」がかかると考えられます。

この状態になると、前頭前野の活動度合いが安静時よりも低下します。注意したいのは、この現象は、視聴する番組の種類に関係なく生じることです。

抑制がかかっている時の前頭前野は、実はリラックス状態にあります。このため一日の仕事が終わった後に、晩酌をしながら2時間程度視聴するのならリラックス効果として全く問題ありません。

ところが、これが一日5、6時間以上、毎日続くと弊害が出ます。

前頭前野は情報処理と思考の中枢で、コミュニケーションや判断、意思決定など重要な機能を担っています。したがって、この部位の活動に長時間抑制がかかると、活動が低下した状態が長く続くことになり、認知機能の低下につながります。

一方、テレビやユーチューブを視聴中でも「手書き」でメモを取ると、前頭前野を含む脳の多くの部位の活動が活性化します。

ただし、この作業はリラックスとは逆の「集中」が必要ですので、晩酌をしながら行うのは苦痛かもしれませんね。

マージャンは脳活動を活性化するか

マージャン中の脳活動計測風景黄色部分が脳計測用センサー
マージャン中の脳活動計測風景 黄色部分が脳計測用センサー
出典:㈱NeU Active Brain CLUBホームページ

香港や台湾などの中国語圏で講演すると「マージャンは脳活動を活性化するか」と必ず尋ねられます。結論から言えば「そこそこ活性化」します。

東北大学発ベンチャー㈱NeUの『Active Brain CLUB』というアプリで、センサーを脳に装着した状態でマージャンを行ってもらい、脳活動を計測した例があります(写真)。

これによれば、手持ちの牌(ぱい)の何を切って、どう進めていくか悩む配牌時、手持ちの牌の構築を行う前半、あがりや放銃(ふりこみ)に気を使う後半に脳活動が活発になる傾向が顕著に見られたとのことです。

マンション入居者どうしでマージャンをする機会があれば、積極的に参加してみてください。