ちょっと一息 2013年8月1日
ついに「親が70歳を過ぎたら読む本」の4刷重版が決定しました。
この本は2011年の2月12日に上梓。ところが、その一か月後の3月11日に東日本大震災が起こりました。
「さあ、これから」というところで、出鼻をくじかれただけでなく、世間の雰囲気はそんな本を読んでいる場合じゃねえ!という雰囲気になりました。
ところが、震災発生後の半年後あたりからじわじわと売れ続け、ついに4刷重版の知らせを受けました。
多くの新刊本が発売後2カ月で店頭から姿を消し、ほとんど売れなくなります。重版まで行くのは、上位20パーセント以下と言われています。そうした現実のなかで、発売後2年5か月経過しても、まだコンスタントに売れ続けていることは大変ありがたく、光栄なことです。
この著書の最後に、出光興産の創業者、出光佐三から学んだ言葉を挙げています。出光佐三の名は、百田尚樹氏の最近の小説「海賊と呼ばれた男」の大ヒットで、これまでご存知でなかった方にも広く知られるようになりました。
実は出光興産は、私が縁あって社会人として最初のスタートを切った会社であり、入社のきっかけは学生時代に読んだ出光佐三の著書だったのです。
著書の最後に引用したのは、出光佐三の『「互譲互助」の精神を取り戻せ』という言葉です。ただし、恥ずかしながら告白すると、出光興産在籍中には、この言葉の意味を真に理解していたとはとても言い難いです。
しかし、四半世紀の年月を経て、私自身が母親の介護や家族とのトラブルに直面して初めて、規則やルールよりも大切な「心の持ち様」を述べているこの言葉にこそ、強く共鳴するようになったのです。
4刷重版達成を機に、その部分をご紹介させていただきます。
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「互譲互助」の精神を取り戻せ
私は、相続トラブルを根本的になくすには、かつて多くの日本人が持っていた「互譲互助」の精神を取り戻すしかないと思っています。この互譲互助という言葉は、私が縁あって社会人として最初のスタートを切った出光興産の創業者、出光佐三がよく語っていた言葉です。
互譲互助とは、文字どおり「お互いが譲り合い、お互いが助け合う」という意味です。前述のとおり、いくら制度を整備しても、制度だけでは予防できない相続トラブルもあります。なぜなら、こうした相続トラブルの根幹は、人間関係のトラブルだからです。そして、この人間関係のトラブルは、多くの場合、互いが相手のことよりも自分の権利だけを主張する、利己的な権利意識の高まりが原因だからです。
だから、こうしたトラブルを解決するには、互譲互助の精神を取り戻す以外にないと私は考えます。互譲互助は、「お互いが譲り合い、お互いが助け合う」という意味ですが、これは「お互いが助け合えば、お互いが譲り合う」という意味にも解釈できます。人は誰かに助けてもらったら、今度は相手を助けたくなるものです。
相手に一方的に助けを求めるのではなく、お互いがどうすれば助け合えるか、お互いが相手の困っていることに役に立てるかを探し合えば、自ずとお互いが譲り合うようになり、争いごとは減っていくのではないでしょうか。そして、この互譲互助の精神は、家族会議などを通じて、家族・親族間のコミュニケーションが改善し、深まることで育まれていくものだと私は思います。