スマートシニア・ビジネスレビュー 2006年12月27日 Vol. 99

presentation先週、ある会社主催のシニアビジネスの
コンテストの審査員を務めた。

このイベントの面白いところは、
シニアビジネスのコンテストにも関わらず、
応募者が全て20代前半の学生だったことだ。

プレゼンテーションを拝聴した結果、
“ビジネスプラン”としては、実現性の詰めが甘いものが大半だった。
しかし、“ビジネスアイデア”として見れば、
斬新なものがいくつかあった。

私はいまでこそシニアビジネスの企画・事業化を生業としているが、
自分が20代前半の学生のとき、ビジネスプランなどというものを
考える機会はまったくなかった。

その当時の自分に比べれば、今回の学生たちの取り組みは
遥かに進歩したものに見えた。
私はこのコンテストでの発表を聴いて、彼らの将来が大変楽しみになった。

一方、こうした活動に対して必ず出る意見は
「20代の若者に高齢者のことがわかるわけがない」というものだ。
こうした意見が出るのは、決まって“高齢者”の側からである。

以前、ある研究会で“高齢”の方が次のような意見を述べていた。

「いま流れているシニア向けの広告は、
シニアの気持ちをわからない若者が作ったものだ。
こうした広告はシニアに作らせればうまくいく」

要するに、「シニアのことはシニアに任せろ」と言いたいのだ。
しかし、こうした意見を持っている人が実際に自分で何かを実現して
成果を挙げたという話はあまり聞いたことがない。
「こうしたい」という意見を持つことと、それを事業として実現することとは、
大きな違いがあるのだ。

「最近の若者はなっていない」というセリフを耳にすることが多い。
私が学生だったときにもよく言われた。

実は、この種の言葉は約5千年前のメソポタミア遺跡の
楔形文字にも記述があるらしい。
こうした言葉は、「年長の立場になった人が
必ず使いたくなる言葉」程度に理解するのがよいだろう。

20代の若者が80代の年長者のことを
完璧に理解することはできない。

しかし、完璧に理解できなくても、
少しでも理解を深めようと「工夫」することは、
20代の若者でもできる。

「高齢社会」の問題は、「高齢者だけ」の問題ではない。
若者の情熱と年長者の知恵がぶつかり合って、
重ね合わさるところに、新しい世界が開ける。

そのことを深く実感したイベントだった。

 

●参考情報

ビジネス現場で直面する「7つの壁」 - シニア市場特有の壁と新事業の壁