スマートシニア・ビジネスレビュー 2009年3月26日 Vol.127
先週厚労省が発表した若年性認知症の実態に関する調査結果のニュースが新聞等を賑わしていた。
調査によれば、18歳から64歳人口における人口10万人当たり若年性認知症者数は47.6人であり、男性57.8人、女性36.7人と男性が多かった。
また、全国における若年性認知症患者数は
3.78万人と推計された、とのことだ。
私はこの数値を聞いて「あれ?」と思った。
その理由は同じ厚労省が平成3年に実施した
全国の65歳以上の認知症者数の推計値に比べて
かなり小さかったからだ。
平成3年推計によれば、2005年で189万人、
2010年で226万人とされているので、
2009年現在であれば少なくとも220万人程度となる。
これに対して、18歳から64歳までが3.78万人、
実に58倍もの差となる。
なぜ、これほど少数の若年性認知症に
目を向ける必要があるのか。
調査では18歳から64歳までを5歳単位で推計してある。
これを見ると50歳から64歳までの年齢層で急増している。
「若年性」といっても、実は大半が50代なのである。
しかも、前述のとおり男性の発症割合が女性より大きい。
調査では介護家族に対する生活実態にも触れている。
特に目を引くのは、家族介護者の約6割が
抑うつ状態にあると判断されたこと、
若年性認知症発症後7割の人が収入が減った
と回答したことだ。
つまり、50代の働き盛りが認知症になった場合の
経済的ダメージ、本人や家族の精神的負担が
あまりにも大きいのだ。
だから、65歳以上に比べて割合が少なくても
若年性認知症に目を向けよ、ということだ。
もう一つ気になったのは、認知症の原因疾患の内訳が異なっていたことである。
一般によく見られる割合は、アルツハイマー病50%、脳血管性障害30%、レビー小体病10%、その他というものだ。
ところが、今回の調査では脳血管性障害39.8%、アルツハイマー病25.4%、頭部外傷後遺症7.7%、その他であり、脳血管性障害が最も多かった。
脳血管性障害は脳梗塞や脳内出血で起こる。
脳梗塞や脳内出血の原因はいろいろあるが、
高血圧や中性脂肪・コレステロールなどの高脂血症、
糖尿病など、いわゆる「生活習慣病」が原因となりやすい。
また、こうした生活習慣病は日頃のストレスから起きやすい。
調査結果では50代で発症率が急上昇しているが、
発症要因は50代以前に形成されていることが考えられる。
こうして見ると、今回の調査結果は、50代はもちろん、
30代40代の中年、特に男性への警鐘なのである。
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