スマートシニア・ビジネスレビュー 2010年8月19日 Vol.143

P1000876ここ最近、100歳以上の所在不明の高齢者が問題になっています。しかし、日本が世界でも有数の高齢国家であることに変わりはありません。

 

戦後、日本人の平均寿命はどんどん伸びており、20年後の2030年には平均寿命が90歳を超える可能性も十分あります。

 

一方、多くの調査によれば、8割近い人が高齢になっても

可能な限り自分の家に住み続けたいと思っています。

 

ところが、現在の一般的な建売住宅の寿命は

せいぜい20年から30年と言われています。

日本人の寿命の伸びに合わせて、より長い寿命の住宅も

必要となることが容易に予想されます。

 

この「長寿命住宅」のモデルは、

実はわが国には古くから存在します。

いわゆる古民家です。

古民家はメインテナンスさえ怠らなければ、

数百年は持つようにつくられています。

神戸市に本拠地を置く建築設計集団YURI DESIGNは、

関西を中心にこうした古民家の知恵を

現代によみがえらす住宅を手掛けています。

 

その詳細は、シルバー産業新聞810日号の私の連載記事

「長寿命時代の新しい古民家」にありますので、

興味のある方はそちらをお読みいただくとして、

今回は紙面の都合で連載記事に書かなかったことをお伝えします。

 

YURI DESIGNが手掛ける「新しい古民家」の

特長のひとつに「草屋根」があります。

草屋根とは、住宅の屋根に土を置き、芝で表土を覆う形態をいいます。

これは植物である芝による蒸散効果を活かした外断熱という手法です。

 

草屋根により、夏の昼間でも屋根裏の天井が熱くならず、

最高温度が34度から36度を超えるような夏場の酷暑期でも

冷房を使わずに済むという省エネ住宅なのです。

これは打ち水により周辺の気温が下がり、涼しくなるのと同じ原理です。

 

これだけでも流行りの太陽電池パネルよりもはるかに優れた

「エコ住宅」なのですが、さらに面白いのは、

この草屋根で花や野菜を作れることです。

つまり、住宅の屋根が「家庭菜園」になるのです。

 

草屋根を設置した当初は芝が中心なのですが、

少し時間が経つと、いろいろな草や花が生えるようになります。

草花の種子が風に乗って飛んできて、自然に草屋根に根付くからです。

 

そして、草屋根では、さつまいもを植えても、ちゃんと芋ができ、収穫できるのです。

土に植えれば、さつまいもができるのは当たり前と思われますが、

自分の家の屋根でさつまいもが採れるというのは面白いと思いませんか?

 

都市部の家は、庭と言っても猫の額程度の広さであることがしばしばです。

しかも隣の家と密接しており、日当たりが悪い場合も多いでしょう。

ところが、この「草屋根菜園」は、家の中で最も日当たりがよい場所にあり、

野菜を育てるのは十分の日照が得られるのです。

 

天然の草と土を使う草屋根は、夏涼しく、冬暖かいという

省エネ住宅として優れているだけでなく、

土地の狭い住宅でも、家庭菜園をつくれるという

付加価値も生み出してくれるのです。

 

  

 

参考情報

 

シルバー産業新聞2010年8月10日号

長寿命時代の「新しい古民家」

 

スマートシニア・ビジネスレビューVol. 129 2009年4月27日

家庭菜園が収入になる仕組み