スマート・エイジング・スクエア-市民参加型の産学連携の新たな形

7月10日 シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第52回

国立大学初の市民参加型の産学連携の試み

半歩先の団塊_シニアビジネス_110710六月一四日に、筆者が特任教授を務める東北大学加齢医学研究所スマート・エイジング国際共同研究センターで新しい事業「スマート・エイジング・スクエア」がスタートした。第一弾として、サーキットトレーニングが認知機能に与える実証研究を産学連携による共同研究として㈱カーブスジャパンと行うことになった。

国立大学において地域住民に日々の生活で心身の健康を維持・向上する機会を提供しつつ、地域住民と直結した研究開発環境を構築する仕組みはこれまでにない初めての試みだ。

スマート・エイジング・スクエアは、産学連携研究を通して、高齢者の心身の健康を維持・向上し、生活の質を向上することを可能とする具体的な個人の健康長寿システムを創生し、それを社会に提案することを目的としている。研究開発部門の基礎研究成果を、企画開発部門のリエゾン活動により産業界とのマッチングを行い、産学連携による共同研究を発足させて、個人のスマート・エイジングに与える効果の実証研究を行う。

地域住民、企業、大学それぞれがウインウインの関係

実証研究は、本スクエア内に設置した産学連携スペースに地域住民が直接参加する形を取る。これにより、地域住民に日々の生活で心身の健康を維持・向上する機会を提供しつつ、地域住民と直結した研究開発環境を構築する。

本スクエアでは、地域住民、民間企業、大学が一体となり、研究開発から商品化まで一貫して取り組める超高齢社会の新たな産学連携のスタイルの確立を目指している。

個人の生活の質を高齢期に入っても維持・向上させるためには、「認知的な刺激」、「運動」、「栄養」、「社会との関わり」の四つの要素が重要になる。本スクエアでは、実証研究活動に協力いただく地域住民の方に「社会との関わり」の機会を提供するだけではなく、産学連携研究による研究開発の主眼を「認知的な刺激」、「運動」、「栄養」のいずれかに絞り込むことで、効率的な実証研究を推進する。

組織間の摩擦は新規事業の生みの苦しみ

ところで、企画に関わった筆者が言うのも何だが、国立大学の研究所のなかに女性専用フィットネスがあるという風景はかなり異色だ。色とりどりの風船や折り紙、女性たちの写真で明るく可愛らしく飾られたフィットネスジムは、およそ国立大学の研究所に似つかわしくない。しかし、似つかわしくないと思うのは従来の価値観で眺めているからである。

人は前例のない新しいものを見ると不安になる。その理由は、前例がないがゆえに、どうなるか想像がつかないからだ。スマート・エイジング・スクエアは、超高齢国家・日本の国立大学として、世界に先駆けて新しい研究領域を開拓するために戦略的に始めた事業である。だから、違和感があって当然なのだ。

過去二四年間、新事業の企画・立ち上げに取り組んできた私の経験では、新しい試みを始めると、必ず関係する組織同士に摩擦が起きることを身にしみて分かっている。

同時に私は、こうした摩擦がイノベーションのための「生みの苦しみ」であることも知っている。この苦しみは時に辛く、耐えがたいものがある一方で、それを乗り越えた時には、「あの頃は苦しくて大変だったね」と笑って思い出話にできる喜びもある。

異質なものがぶつかる所でイノベーションが生まれる

私の尊敬するアメリカ人のリタイア経営者が、いつも私にこう言う。

「ミスター村田、アメリカの強みの源泉はどこにあるか知っているかい?それは世界中から移民が来ることだよ。イノベーションと言うのは、異質なものがぶつかる所で生まれるんだ。だから、日本も移民を受け入れた方がいい」

日本についてのくだりは別にしても、異質なものがぶつかる所でイノベーションが生まれるという意見には私も一〇〇%賛成だ。

何よりもオープンを待ち望んでいた大勢の年配女性の方々が、楽しそうに筋力レーニングに取り組んでいる姿を見て、私はこれから何かが起こっていく予感を十分に感じた。

震災復興のシンボルの一つとして本事業が新たな産学連携の在り方に示唆を与えることを願っている。

*本稿はシルバー産業新聞社のご厚意により全文を掲載しています。

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