任意後見制度を利用する②

解脱8月号 連載 スマート・エイジングのすすめ 第20回

解脱‗0801‗掲載さらに望まれる徹底したルールづくり

任意後見人は、もともと委任者自身が最も信頼できる人として自分で選んだ人です。前述のとおり、任意後見人の仕事は、家庭裁判所によって任意後見監督人が選任された後に初めて開始されます。

つまり、家庭裁判所によって選任された任意後見監督人が、任意後見人の仕事が適正になされているか否かを監督する仕組みになっています。また、任意後見監督人からの報告を通じて、家庭裁判所も任意後見人の仕事を間接的にチェックする仕組みになっています。

さらに、任意後見人に、著しい不行跡、その他任務に適しない事由が認められたとき、家庭裁判所は、本人、親族、任意後見監督人の請求により、任意後見人を解任できるようになっています。このように、不正を起こさないための監督機能が盛り込まれているのが任意後見制度の特徴です。

解脱‗0801‗表紙しかし、現実には残念ながら後見人が委任者の財産を使いこんでしまうというケースがときどき起こっています。なかには、東京司法書士会に所属する司法書士という法律の専門家や日本社会福祉士会所属の社会福祉士が委任者の財産を使いこんでしまったという不祥事もありました。

こうした成年後見制度の“専門家”による不祥事は、単に契約違反であるにとどまらない極めて由々しき事態であり、成年後見制度に対する信頼を根底から失墜させかねないものです。このような不祥事の防止は、発展途上にある成年後見制度の課題と言えましょう。

米国の証券取引委員会(SEC)が世界の証券取引の模範となる厳しい管理体制・倫理基準を持っているのは、過去に起きたさまざまな証券取引不祥事から徹底的にコンプライアンスの仕組みを整備してきたからです。成年後見制度にも、こうした不祥事から学び、そこから次は不祥事を起こさないために法的整備も含めた徹底的なルールづくりが今後求められます。

法定後見制度とは何か?

前回より、将来のトラブル予防のために、あなたの親がまだ元気なうちに任意後見契約を結ぶことをお勧めしています。しかし、読者のなかには、すでに親が重い認知症で判断能力が十分でなくなったが、任意後見契約は結んでいないという方もいらっしゃると思います。こうした場合には本人を悪徳業者などによる不当な行為から保護するために、「法定後見制度」を利用します。

任意後見制度が、まだ健康で元気なうちに、将来判断能力が不十分になった場合に備えるものなのに対して、「すでに」判断能力が不十分になった人を援助するのが法定後見制度です。

法定後見制度は、「後見」、「保佐」、「補助」の三つに分かれており、判断能力の程度など本人の事情に応じて制度を選べるようになっています。

この制度においては、家庭裁判所によって選ばれた「成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)」が、本人の利益を考えながら、本人を代理して契約などの「法律行為」(契約や解除などのことを言います)をしたり、本人が自分で法律行為をするときに同意を与えたり、本人が同意を得ないでした不利益な法律行為を後から取り消したりすることによって、本人を保護・支援します。

「成年後見人等」は、本人のためにどのような保護・支援が必要かなどの事情に応じて、家庭裁判所によって選任されます。本人の親族以外にも、法律・福祉の専門家その他の第三者や、福祉関係の公益法人、その他の法人が選ばれる場合もあります。

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