解脱1月号 連載 スマート・エイジングのすすめ 第1回
超高齢社会のイメージとは?
国連により高齢化率が21%を超える国は「超高齢社会」と定義されています。2013年10月時点で高齢化率25.1%の日本は、名実ともに超高齢社会です。
皆さんはこの超高齢社会という言葉に何をイメージされますか?年金崩壊、医療費高騰、介護地獄、孤独死、老後難民、人口減少、限界集落、自治体消滅・・・などなど、マスコミでは暗い話の“オンパレード”です。このように超高齢社会という言葉のイメージは、一般に明るくありません。
こうしたネガティブな社会観、つまり歳をとることや高齢化はよくないことだ、というイメージを逆手にとって儲けようとする動きがあります。その代表が「アンチエイジング」商品です。
私が講演等で「アンチエイジングとはどういう意味でしょう?」と尋ねると、たいてい「若返り」という答えが返ってきます。ところが、「アンチエイジング」という言葉の意味は、実はそのようなものではありません。
「アンチエイジング」の間違い
「エイジング」という言葉は、英語でageingと書きます。ageは「歳を加える」という意味の動詞、ingは動詞の進行形の表示形式です。したがって、ageingとは「齢を加え続ける」、つまり加齢するという意味です。
そもそも、なぜ、加齢は起こるのでしょうか。私たちの身体はおよそ60兆個の細胞でできています。このうち、100億個の細胞が毎日死んで新しい細胞と交代します。この過程を通じて私たちの身体は機能や形態が変化していきます。
つまり、この世に生まれた瞬間から(正確に言うと、受精した瞬間から)あの世に行くまで、私たちの身体は変化し続けます。つまり、エイジングとは生き続けることにほかなりません。
アンチ(anti-)とは否定を意味する接頭語です。したがって、anti-ageingとは、生き続けることの否定、つまり死ぬという意味になります。若返りでは決してありません。
歳を加えることは成長すること
私たち東北大学では2006年からスマート・エイジングというコンセプトを提唱しています。スマートとは「賢い」という意味です。
したがって、「スマート・エイジング」は「賢く齢を加えていく」という意味になります。同時に、「歳を加えることは人間として成長すること、知的に成熟していくこと」という意味も込めています。
齢を加えるにつれ、私たちは体や心などいろいろな面で変化します。ただ、あいにく、この変化は私たちにとって必ずしも都合のいいことばかりではありません。むしろ辛いことが多いのが現実です。
しかし、そういう変化にもっと賢く対処する生き方を考えましょう、そして、それを考え続けることを通じて私たちはもっと成長しましょう。そういう意味合いを込めたのが、このスマート・エイジングという言葉なのです。
私たちは生きている限り、必ず齢をとります。ところが、齢をとることがいいことか悪いことかを決めているのは、実は私たち自身です。そうであるならば、私たちは齢のとり方を主体的に選ぶことができるはずです。
齢を加えるにつれてそのまま朽ち果てていく生き方を選ぶのか。それとも、齢を加えるごとにより賢く輝いていく生き方を選ぶのか。どうせ齢を加えるなら、後者のほうがいいと思いませんか?
スマート・エイジングの正確な定義は「エイジングによる経年変化に賢く対処し、個人・社会が知的に成熟すること」です。この連載では、スマート・エイジングのための秘訣や超高齢社会を生き抜くヒントを具体的な事例を交えてお話しする予定です。