2012年7月4日 保険毎日新聞
65歳以上の高齢者が総人口の21%以上を占める「超高齢社会」に突入した日本。人々の 「加齢」や「超高齢社会」に対するイメージがネガティブであることは否めず、実際、高齢期の人生の過ごし方や高齢者の割合の増加に伴う社会構造の変化など、個人や社会を取り巻くさまざまな不安・間題が浮上している。そんな中で、本書は今までのイメージをぬぐい去る新しい「加齢観」を提唱する。
「スマート」という言葉から「やせること」を連想する人も多いかもしれないが、正しくは英語で「賢い」。「エイジング」が「年をとる、齢を加える」であることから、「スマート・エイジング」は「賢く齢を加えていく」という意味になる。
数年前から日本に定着し始めた「アンチエイジング」が「若いころの自分に戻る、老化を食い止める」、つまり年を取ることに否定的な考え方であることと一線を画し、「スマート・エイジング」では高齢期を「知的に成熟する人生の発展期」と定義付け、「加齢による経年変化に賢く対処すれば、個人・社会は知的に成熟することができる」と説く。
本書では、その理念、実践活動および背景となる研究活動の紹介を通して、超高齢社会に健やかで穏やかな生活を続けるための方法を提案している。著者は、脳機能イメージング研究者で脳トレブームの立役者としても著名な東北大学・川島隆太教授と、シニアビジネスの第一人者で高齢社会研究の専門家としても国際的に活躍している村田裕之氏。
第一部「スマート・エイジングの実践」では、年を重ねても元気に過ごす秘訣を中心に、身体トレーニングや脳の健康維持の方法などを具体的に解説。
第二部「スマート・エイジングの研究」では、医学的・脳科学的視点から、晩年まで健全な生活を送るためには「認知」「運動」「栄養」「社会性」が必須であると結論付け、その4条件の研究結果を紹介している。
生きている限り続いていく「加齢現象」を、今までとはまったく別の視点からとらえることができるようになる一冊だ。
本書の構成は次のとおり。
▽プロローグ:アンチエイジングの間違いとスマート・エイジング
▽第一部:スマート・エイジングの実践
▽第二部:スマート・エイジングの研究
▽エピローグ:自分の未来は自分でつくる
▽特別寄稿:脳の健康維持(ブレイン・フィットネス)への希望とスマート・エイジング
(新書、231ページ、定価740円十税)