解脱2月号 連載 スマート・エイジングのすすめ 第14回
「すべての人が満足できる老人ホーム」というのはありません。しかし、「ここなら安心して入れそう」と判断できる評価ポイントは、(1)ホーム長の能力、(2)介護リーダーの能力、(3)入居率、(4)ホームの雰囲気、(5)入居者と家族の評価です。
[1] ホーム長の能力
老人ホームという商品は、見学会などでは、建物や設備といった「ハード」に目が向きがちですが、肝心なのは食事や入浴、介護サービスなどの「ソフト」の質です。このソフトの質は運営するホームの「スタッフの質」に大きく依存します。このスタッフを活かすも殺すもホームの経営トップであるホーム長の力量次第なのです。
ですから、ホーム見学の際は、必ずホーム長に直接会って、ホーム運営に対する考え方をじっくりと聴き、その人の人間観や人柄を知ることが極めて重要です。
老人ホームは、コストのおよそ50から70パーセントを人件費が占める労働集約産業です。したがって、そこに働くスタッフが一丸となってやる気満々でいきいきと働けるか、そうでないかによって、ホームの雰囲気だけでなく、ホームの経営にも雲泥の差が出ます。
[2]介護リーダーの能力
ホーム経営の要はホーム長ですが、規模が大きめで、スタッフ数が多くなると、いくら ホーム長が優れていても、現場レベルでは入居者への対応がうまくいっていないケースもあります。これをチェックするには「現場のリーダー」の力量を知ることです。
そのためには介護棟であれば、フロアリーダー、または介護サービス部門のリーダーに直接会い、そのホームにおける介護サービスの考え方、認知症の人への対応方法などを聴くことが役に立ちます。
[3]入居率
老人ホームの質を評価するための尺度で最もわかりやすいのは入居率です。これは、ホームの定員(全戸数)に対して何人(何戸)入居しているかの割合です。入居率が常に八五パーセント以上で安定しているところは、仮に入居者の死亡などで欠員が生じてもすぐに新規の入居者があります。これは「あそこなら安心だ」という評判が潜在入居者のなかでできあがっているからです。
[4]ホームの雰囲気
老人ホームは、価値観や性格の異なる人たちとの集団生活の場で亡くなるまで続くことになります。したがって、その「場の雰囲気」がどのようなものであるか、入居する人にとって、相応しいものであるかの見極めが重要となります。できれば体験入居を数日間行なって体感するのが一番です。
体験入居を多くのホームで行なうのも大変なので、見学したときに、だいたいの雰囲気を把握することが必要でしょう。そのためには、現場のスタッフや、すでに入居している人、できれば入居者の家族との会話の機会を多く持つことが最も役に立ちます。スタッフ同士が、どのようなコミュニケーションの仕方をしているかに目を配ることも重要です。
[5]入居者と家族の評価
老人ホームという商品は、基本的に「口コミ商品」です。したがって、その老人ホームの評判を知りたければ、すでに入居している方やその家族、あるいはそのホームのある場所の周辺に住んでいる人から話を聞くのが大変有益です。
まだ入居者のいない、あるいは入居者が少ないホームの内覧会や見学会に行っても、その価値は決してわかりません。入居を前提とした見学の場合は、ある程度入居率の高いところに行かないと意味がないと認識してください。