新潟豪雨の被害状況

スマートシニア・ビジネスレビュー 2004年7月23日 Vol. 55

先週は、私の実家のある新潟県見附市が、
不幸にして毎日全国放送された週でした。
7月12日夜からの豪雨のためです。

実家は、決壊した刈谷田川の堤防から
わずか30メートルの距離にありましたが、
幸い、大した被害なく済みました。

しかし、残念ながら、周辺の5千世帯には
避難勧告が出され、大きな被害が出ました。

新潟県では15人が亡くなりました。
特に、今回注目されているのは、
そのうちの12人が70歳以上だったことです。
多くの地方紙が、高齢化時代の
「災害弱者」対策の必要性を指摘しています。

現在、被災地では、復旧第一で、
今後の対策に手が回る状況ではありません。
しかし、いずれ本格的な対策が議論されるはずです。

今回は、私自身が、
見附市の実家とのやり取りを通じて、
感じたことをお伝えしたいと思います。

12日の夕方に実家に電話をしたところ、
現地で激しい雨が降っていることを知りました。

実は、この日、関東甲信地方で
梅雨明け宣言が出されたのです。
通常は、「関東甲信越」として
呼ばれることが多いのですが、
なぜか「越=越後(新潟)」が抜けていたことに
その時気がつきました。

13日の朝、テレビを見て、
生まれ故郷の栃尾市と実家のある見附市が
豪雨で大変な状況であることを知り、
早速実家に電話をかけてみました。

しかし、何度かけても電話は通じません。

阪神大震災のときもそうでしたが、
災害発生時は、その地域への電話が通じなくなります。
埼玉県に住んでいる私が、
遠く離れた実家の緊急事態で、
家族の安否を確認する唯一の方法が電話です。

しかし、いざという時に全く役に立ちません。
これは、普段は空車が余っているのに、
金曜の夜など、一番乗りたいときに、
一台も来ないタクシーのようなものです。

NTTが災害用伝言ダイヤルという
安否確認用のサービスを行っているのは、
知識としては知っていました。

しかし、いざという時に、このサービスを
利用しようという気持ちになりません。

その理由は、「利用方法が煩雑」という
イメージがあるからです。
それと、自分が実家あてに伝言を残したとしても、
被災地である実家側が、
果たしてその伝言を聞くのだろうか
という気持ちもあります。

緊急時ほど、なるべく早く、
当事者同士で直接会話をしたいものです。
このような気持ちが、伝言サービス利用への
壁になります。

しかし、固定電話では
まったく連絡がとれませんでしたが、
実は携帯電話は普段とおりつながり続けました。
これは今回の発見です。
このおかげで実家が被害を免れたことや
現地の被害の様子を直接確認することができました。

ここで痛感したのは、日常使っている機器が、
緊急時にも日常の操作のままで利用できることが、
やはり有用だということです。

言い換えると、普段ほとんど使わない機器は、
特別な訓練でもしていない限り、
緊急時にはもっと使わないということです。

そこで、今後の対策の一つとして、
高齢者を含めた全世帯に、
携帯電話への加入を義務付けることが考えられます。
電波が届くエリアであれば、
いつでも、どこからでもかけられる携帯電話は、
現時点では、 緊急時の連絡手段として最適だからです。

このためには、携帯電話を利用していない高齢者向けに、
さらに操作が簡単で使いやすい電話機が望まれます。
一時期、NTTドコモが高齢者向けに商品化した
「らくらくフォン」を上回る操作性が求められるでしょう。

また、携帯電話でもiモードを利用した
災害用伝言メッセージサービスがあるようですが、
これも、もっと簡単な操作への改善が望まれます。
電池の一層の長寿命化や小型燃料電池での
充電装置なども有用となるでしょう。

もちろん、強制加入には、 個人の費用負担の問題も残ります。
しかし、被害最小化のための社会的コストとして、
加入費用の一部を行政側で負担するなどの
優遇措置があってもよいと思います。

新聞各紙は、今回の被害を高齢社会における
新たな課題として提議しています。

こうした惨事の教訓を、
具体的な商品・サービスに 落とし込んでいくことが、
世界最速の高齢国家・日本の
今後の大きな知的財産になるのではないでしょうか。