スマートシニア・ビジネスレビュー 2005年5月10日 Vol. 68

nikkei-mastersまもなく定年退職を迎える団塊世代を
消費の主役とみなす論が世にあふれています。

これを反映してか、中高年をターゲットにした雑誌や
ウェブサイトが昨年あたりからにわかに増えています。

たとえば、小学館の「おとなのたまり場ボンビバン」、アーデント・ウィッシュの「はいから」、ニフティの「語ろ具」などをはじめ、今年は続々と登場しそうな気配です。

私はこうした動きを見ると、数年前に起きた
中高年向け雑誌創刊ブームを思い出します。

それは、多くの雑誌が次々と創刊されたにも関わらず、
その大半が2年以内に廃刊になっている事実です。

歴史は繰り返すといいますが、
今回のブームもまた数年前の再来を予感します。

その最大の理由は、コンテンツの中身が、
語る、遊ぶ、楽しむなど、趣味情報を中心としたものが大半で、
数年前のブームの時とほとんど変わっていないことです。
したがって、こうした内容でつくられる雑誌やウェブサイトは、
今後かなりの苦戦を強いられるでしょう。

このような内容に偏る背景には、
団塊世代が定年退職を迎えると、時間に余裕ができ、
趣味や道楽にお金を使うようになり、
新たな消費の主役になる、という仮説です。

しかし、実はこれは仮説というより、そうなって欲しい、
という「一方的な期待感」と言う方が正しい。
こうした期待感が商品提供側に蔓延していることが、
内容的に偏った、似たようなサイトの乱立につながるのです。

何よりも欠如しているのは、定年後の団塊世代が、
商品・サービスの「使い手」であるだけでなく、
「担い手」でもあるという視点。
つまり、「働き手」だという視点です。

その理由は、まず、定年退職後も家計を維持するために
働かざるを得ない人の割合が増えていること。
そして、家計を維持するためではないが、
社会との関わりを持ち続けたい、
生きがいが欲しいなどの理由で
働き続けたい人の割合が増えていることです。

これらの傾向は日本だけでなく、
AARPの調査でも明らかなように、
米国でも近年顕著に見られるものです。

しかし、最も大きな理由は、
団塊世代の大多数がサラリーマンであり、
これまで仕事中心、というより会社中心できた人たちが、
定年を境に急に趣味や道楽だけで
時間を過ごすようになるとは思えないからです。

逆に言えば、 定年退職後も趣味や道楽を楽しみ、
いきいきとされている方は、
定年前から趣味や道楽を楽しみ、
いきいきとされている方です。

つまり、
定年前から「自分なりの"遊び"のスタイル」を持っている方は、
定年後もそのスタイルを踏襲し、発展させていく。

したがって、
定年後も「働く」ことで人生を楽しみたいと思うなら、
定年前から「自分なりの"働く"スタイル」をもつことが
大切になります。

この、「自分なりの"働く"スタイル」を確立するのは、
最終的には自分以外に他ならないのですが、
その後押しを支援してくれるサービスには
大きなニーズがあるでしょう。

いまのところ、中高年向け雑誌で
これに真正面から取り組んでいるのは、
日経マスターズだけのようですが、
今後百花繚乱が予想される雑誌やサイトの差別化の方向は、
間違いなく「定年後の働き方」になるでしょう。