コロナ渦で増えた趣味

クラブツーリズム 旅と人生を楽しむ スマート・エイジング術 第11回

コロナ禍で運動不足・カロリー過多・不眠症が増えている

筆者らが提唱しているスマート・エイジング実現のためには「運動」「認知」「栄養」「社会性」の4つが必要条件です。

ところが、新型コロナウイルス感染症の流行で生活スタイルが変わり、これらの条件を満足しにくい要因が増えてきました

例えば「運動」の面では、外出自粛の影響で特に中高年を中心に運動不足の人が増えています。特に高齢者は感染時の重症化リスクが高いとされてから、外出機会が減り運動不足になりがちです。

また「栄養」の面では、在宅勤務や巣ごもり消費の増加でカロリー過多となり「コロナ太り」の人が増えています。

さらに「社会性」の面では、外出自粛の影響で他者とのコミュニケーション不足による孤独感の増加、うつ病や睡眠障害が増加しています。特に外出制限の厳しい高齢者住宅や介護施設では深刻です。

テレビ視聴とビデオ鑑賞が増加

一方「認知」の面ではどうでしょうか。コミュニケーション不足が認知機能の低下を促すのはもちろんですが、巣ごもり生活の長期化でテレビやビデオ視聴時間が増えていることが気になります。

日本能率協会総合研究所が昨年10月に60歳から90歳の2500人を対象に実施した調査を見ると、その傾向が明らかです。(図表)

3年前に比べて回数が増えた趣味は何かという設問に対して、テレビ視聴17%、園芸・庭いじり16%、散歩・ウォーキング14%、読書13%、ビデオ鑑賞8%と回答があり、テレビ視聴とビデオ鑑賞頻度が増加していることがわかります。

テレビ視聴時に前頭前野に「抑制現象」が起きる

以前触れましたが、テレビ視聴時に大脳の前頭前野(ぜんとうぜんや)に「抑制現象」が生じることが東北大学の川島隆太教授らの研究でわかっています。この現象が生じると、前頭前野の活動量が安静時よりも少なくなります。

注意したいのは、この現象はテレビ番組の種類に関係なく生じることです。

抑制現象が生じている場合の前頭前野は、実はリラックス状態にあります。このため一日の仕事が終わった後に2時間程度視聴するのならリラックス効果として問題ありません。ところが、これが一日5、6時間以上、毎日続くと弊害が出ます。

前頭前野は情報処理と思考の中枢であり、コミュニケーションや判断、意思決定など重要な機能を担っています。したがって、この部位の活動に長時間抑制がかかると、活動が低下した状態が長く続くことになり、認知機能の低下につながります。

ユーチューブ視聴時にも前頭前野に「抑制現象」が起きる

さらに、懸念されるのはテレビに加えて「ユーチューブ」の視聴者数と視聴時間も増えていることです。

ユーチューブはパソコンやスマホがあれば誰でも気軽に利用できるため、コロナ禍で一人当たりの利用時間が増え、新規視聴者数も増えました。

ところが、脳科学的にはユーチューブ視聴はテレビ視聴とほぼ同じ活動です。このためテレビ視聴時と同様に、視聴時に前頭前野に抑制現象が生じると考えられます。

このようにコロナ禍の進展により、前頭前野の活動を抑制する生活スタイル、いわば「アンチ・スマート・エイジング」が急増しているのです。

対策はテレビ・ビデオ視聴時間の制限・脳トレの実施

対策としては、まず、テレビ視聴とユーチューブ視聴は、一日2時間程度にすることです。このためには本当に観る価値のあるものだけに絞り込むことが必要です。

次に、これまでの連載で紹介した脳のトレ―ニング(脳トレ)を一日15分程度集中して行うことです。これにより活動量の低下した前頭前野の活動を活性化してバランスを取ることができます。

ウィズコロナ時代は、ますますスマート・エイジングの考え方に基づく実践が重要です。