スマートシニア・ビジネスレビュー 2011年5月23日 Vol. 152

sijocyousa企業の皆さんからよく受ける相談の一つに、
「シニア市場に進出したいがどこに有望な市場があるのか わからない。ついては、あらゆる市場分野を
網羅的に調査して有望な市場を見つけ出したい」
というのがあります。

私はこのような相談を受けた場合、
「そうした調査はやりたければやってもよいが、
たいてい時間とカネの無駄になるのでやめた方がよい」
とアドバイスします。

なぜ、やめた方がよいのか。

その理由は、こうした網羅的な市場調査の結果、
その企業の商品が売れるようになったという例を
ほとんど聞いたことがないからです。

別の言い方をすれば、
「自社で売りたい商品はこれだ」と言う
仮説が明確でない状態でこうした市場調査を行っても、
単なる市場整理というお勉強で終わると言うことです。

百歩譲って、調査の結果、
有望な市場分野が見つかったとしても、
その市場分野で、その会社が競争力ある商品を
必ずしも提供できるわけではありません。

その市場が有望と思われることと、
その市場で自社の商品に競争力があることとは
別のことだからです。

そんな市場調査に多額の予算をかける代わりに、私は
「自社商品で売れていないものの『周辺』をよく調べなさい」
とお勧めします。

かつて、セブン‐イレブンの鈴木敏文会長が、
自社店舗に導入しているPOS(販売時点情報管理)システム
について、次のように語っていました。

「POSを使うと、確かに売れ筋はわかる。
しかし、売れなかった商品が、
なぜ、売れなかったのかがわからない。
売れなかった商品にこそ、
次の事業機会が隠れているはずだ」

「売れていない」という事実をどう解釈するか。

その解釈の仕方が、
新市場を見つけ出せるかどうかの
分かれ道となるのです。

参考情報

「不」の発見者:飽和市場の隣には新たな「不」が出現する
多様性市場で成功する10の鉄則

シニアビジネス(ダイヤモンド社)
「不」の発見者