ウィズコロナの時代こそ、スマート・エイジングという生き方

11月25日 チャームカレッジ第12回

チャームカレッジは、株式会社チャーム・ケア・コーポレーション「認知症改善プログラム」の一環として、毎月一回、全12回実施したセミナーです。第12回は総集編としてこれまでの話の要点をお話ししました。

講義内容①:健康で自立して生きるために

第12回目を迎えたチャームカレッジではこれまでの講義で解説してきたスマート・エイジングの考え方を振り返りました。

2021年9月の日本の高齢化率は29.1%を超え、世界一の高齢社会となっています。その中でも認知症高齢者の数は2025年には730万人と予想されており、その社会的コストは日本では14兆円と言われています。

この超高齢社会ではいかに健康に過ごすかが重要になります。村田先生は2006年より加齢に対しネガティブなイメージをもつ老化、アンチエイジングとは違い、発達・成長といった思想をもとに「スマート・エイジング」を提唱されています。

要介護状態になる理由の上位である脳卒中を防ぐためには生活習慣病の予防が重要です。そのために最も効果的なのはウォーキングなどの有酸素運動です。また、女性が要介護になる大きな理由として筋力低下による骨折、関節疾患、高齢による衰弱があり、筋トレも重要になります。特に体幹部と下肢の筋力低下予防が重要でスクワットなどが効果的です。

また、要介護状態になる理由の最上位である認知症を防ぐためには脳トレが効果的です。音読、手書き、簡単な計算が脳トレの基礎となります。それらを取り入れた学習療法は「認知症非薬物療法のスタンダード」として厚労省にも認められています。家庭でも出来る手軽な脳トレとして800字程度の文章を大きな声で音読がおすすめです。

高齢になると低栄養が筋肉が衰えるサルコペニアの主原因になります。東北大学の研究によれば1975年頃の日本食が代謝に優れ、体への負担が少ないことがわかっています。この日本食の特徴として、ごはんを中心に出汁、発酵食品を上手に使う事、野菜、 大豆、きのこ、果物、海藻、青魚をよく食べ、卵、乳製品、肉などが適度に摂取します。 これに加えて適度の緑茶を飲む事もあげられます。

講義内容②:元気でいきいきと過ごすために

元気でいきいきと過ごすためには、目標設定型の生活が効果的です。目標を達成して誰かに褒められた時に報酬系と呼ばれる神経ネットワークが活性化しドーパミンが分泌されます。

ドーパミンは元気ややる気を感じさせる神経伝達物質で、ドーパミンの分泌が増える生活習慣により元気でいきいきと過ごせます。目標設定型の生活を送る事やサプライズなどの予期しない嬉しいことを分け与えあえる人間関係を作る、旅行などの嬉しいイベントの予約を入れるなどでドーパミンの分泌を増やす事ができます。

また、リズミカルに活動する事が重要です。生体リズムに関連するセロトニンは不安感をなくし精神を安定させる神経伝達物質です。不足する事で睡眠障害をまねいたり、うつ病の原因となります。

セロトニンを効果的に分泌するには太陽の光を浴び、リズム運動をし、グルーミングをする事が大切です。これらを一度に行う方法として、朝起きた後に30分リズミカルにウォーキングをし、シャワーを浴びて交感神経を優位にして、よく噛んで朝食をとる朝活を村田先生に紹介いただきました。

不眠の原因を取り除くには、睡眠ホルモンのメラトニンを考慮することが重要です。メラトニンは日中分泌されたセロトニンを材料に夜に生合成されます。

また、生活習慣の改善により不眠の原因を取り除く事も出来ます。夜中にブルーライトを浴びない、入眠前2時間は飲酒をしない、入眠前2時間は激しい運動をしないなどです。また、自分に合う寝具を使う事で体の痛みにより睡眠を妨げるなどのネガティブ要因を取り除くことも重要です。

講義内容③:自分らしく生きるために

ジーン・コーエンによる後半生心理的発達の4段階において65歳から75歳までの期間はまとめ段階に分類されます。まとめ段階には「世の中に恩返しをしたくなる」といった特徴がみられます。

他人から感謝されるとき、幸福を感じる事は心理的報酬であり、このとき報酬系の神経ネットワークが活性化され、やる気を感じて継続することができます。また、他人に感謝するときも幸福を感じることができます。このときは脳内にエンドルフィンが分泌され多幸感をもたらすと言われています。

自分らしく生きるためには好きな事に徹底的に取り組むことが大切です。自分らしさとは、自分自身は気づかないが、他人は気がつくという性質があるもので、他人との関係性で定義されます。

自分らしさを他人が認識するには自分の内面から出る情熱が必要です。一所懸命に本当に好きな事に取り組むとき他人はその人らしさを認識するからです。

好きな事に取り組み続けると脳は萎縮しにくくなります。知的好奇心レベルが高いと、高次認知機能を担う領域である側頭頭頂部の委縮がより抑えられます。これは認知症予防にもつながります。

社交性が高く、社会との繋がりが高い人は主観的幸福感が高くなります。主観的幸福感とは自分が幸福だと感じている事ですが、これが高い人は認知症のリスクが下がります。

また、社会と関わり、コミュニケーションが多いほど認知症リスクが低くなる傾向があります。これはコミュニケーションが脳の多くの領域を駆使するからです。

スマート・エイジングを構成する要素として運動、認知、栄養、社会性があります。今回の講義ではそれぞれの要素に触れてきましたが、自分らしく生きるという事は社会性に関する要素になります。

講義内容④:ウィズコロナの時代こそ、スマート・エイジングという生き方

コロナの感染状況が再び悪化するようなことになれば、高齢者は感染時のリスクが高いと言われるため、なるべく外出を控え、家や部屋にこもる生活になってしまいます。そうすると運動不足によりフレイルが加速し、会話不足で認知機能が衰え、認知症が進展してしまう状況になります。

新型コロナの事を正しく理解し、感染防止をしながらここまで紹介してきたスマート・エイジングの生活スタイルを続ける事がより健康でいきいきとした生活に有効です。