毎日新聞 連載 村田裕之のスマート・エイジング 第1回
皆さんは「アンチエイジング」の意味をご存知ですか?私が講演などで尋ねると、たいてい「若返りの技術」とか「年をとらないための方法」という答えが返ってきます。果たして正解はどうでしょうか。
「エイジング」は、英語でageing(米語ではaging)と書きます。ageは「年をとる」という動詞、ingは動詞の進行形です。したがって、エイジングとは「年をとっていく、齢(よわい)を加える」という意味です。日本語では加齢と言います。エイジングは、受精した瞬間からあの世に行くまで、高齢者だけでなく、すべての世代の人が生きている限り続きます。つまり、エイジングとは生きていることの証しです。
一方、アンチは英語で否定を意味する接頭語です。したがって、アンチエイジングとは、生きていることの否定。つまり死ぬという意味になります。若返りの逆ですね。
私の所属する東北大学加齢医学研究所では「スマート・エイジング」という言葉を提唱しています。スマートは「賢い」なので、スマート・エイジングは「賢く齢を加えていく」という意味です。
年をとるにつれ、私たちは体や心などがいろいろな面で変化します。こうした変化は私たちにとってつらいことが多いのが現実です。しかし、そういう変化にもっと賢く対処する生き方を選びましょう。そして、それを考え続けることで、私たちはもっと成長しましょう。そういう意味合いを込めたのが、このスマート・エイジングという言葉なのです。 (東北大特任教授)
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むらた・ひろゆき 新潟県出身。シニアビジネス分野のパイオニアで高齢社会研究の第一人者。著書に「スマート・エイジングという生き方」「シニアシフトの衝撃」など。