毎日新聞 2013112日 連載 村田裕之のスマート・エイジング  8

sa_131102日本人の約8割は年を取ってもできる限り「いま住んでいる自宅に住み続けたい」と思っています。しかし、こうした希望に反して高齢期には自宅に住み続けられるとは限りません

 

一般には、元気なときには終の棲家にしようと思っていた自宅も、持病と付き合う必要に迫られた場合など、状況によっては住み替えの必要性が出てきます。

 

特に、夫婦で暮らしていたときには考えもしなかったでしょうが、配偶者に先立たれると一戸建てでは家の広さがかえって不便になりがちです。庭の草取り、階段の上り下り、雨戸の開け閉めなど、若い時には何ともなかった作業が、高齢期になるとおっくうに感じ、苦痛にさえなります。

 

こうした理由から、一戸建てに1人で住むのが心細くなり、マンションや有料老人ホームへ住み替える人が多くいます。

 

一方、要介護状態になった場合。「最期まで自宅で介護を受けたい」と決めている人が多いですが、要介護度が重くなれば、介護家族の負担は半端ではなくなります。費用の面でも、自宅介護の方が施設介護よりも高くつく場合もあります。

 

支払い可能な資金の範囲でどのような住み替えが可能なのかの検討を、まだ元気なうちに行なうべきです。そして、ある程度の方針が決まったら、入居できそうな老人ホームや介護施設を複数見学することです。

 

私自身、多くの老人ホームを見学していて思うのは、「高価なホーム=いいホーム」とは言い切れず、また、「安いホーム=悪いホーム」とも言い切れないことです。

 

老人ホームや高齢者向け住宅はまさに玉石混淆の状態。だから、判断能力が十分で元気なうちに、病気や介護に備えた住み替え先候補を、本人の目で確認することが役に立ちます

 


参考文献:親が70歳を過ぎたら読む本