企業経営 第126号(2014年春季号)Zoom Up
一般財団法人企業経営研究所が発行する機関誌「企業経営」に「シニアシフトする消費マーケット」と題した拙稿が掲載されました。
企業経営研究所は、静岡のスルガ銀行と地元財界が中心となって立ち上げたシンクタンク。これまで何度か寄稿してきました。
バブル経済崩壊後、特に地方銀行では産業空洞化、経済低迷で企業成長が鈍化し、融資機会が減ったと言われています。せっかく、多くの預金を集めても、それを運用する機会が減ったため、国債ばかり買って運用していると揶揄されています。
しかし、シニアシフトという大きな構造変化に伴い、新たな事業機会が確実に生まれています。こうした分野に進出しようとする企業に起業資金や運転資金を融資し、経営アドバイスを提供するのが本来の銀行の役割のはずです。
また、これからシニアシフトは世界中に拡大していきます。高齢率で日本は世界一ですが、アジアでは香港、韓国、シンガポール、台湾が続いています。しかし、これらの国々ではまだ高齢化への対応は遅れており、日本の対応を学ぶニーズが高まっています。
日本は高齢化の進展が早いだけに、それに伴う課題やその解決に向けたビジネスチャンスの顕在化も早いのです。このため、日本はシニアビジネスの分野で世界のリーダーになれる可能性が十分にあります。
そして、競争力のある商品・サービスさえもっているならば、地方の企業でも十分に勝算があるのです。たとえば、静岡県には東京エレクトロンという会社がありますが、カミオカンデなどのノーベル賞級の計測機器の分野で必ずその製品が使われているトップ企業です。
新興国において、今は子ども向けの商品を販売し、そのうち高齢化が進んだら、日本のシニア市場で育んだ大人向けの商品を販売していけばよいのです。シニアビジネスは日本だけのビジネスではなく、グローバル規模で顧客のライフサイクルにわたるビジネスになるのです。
これからはシニアビジネスに取り組む企業を支援することが銀行の成長戦略となるのです。先日講演した北都銀行では銀行が中心となり、地元企業を組織化してシニアビジネスに取り組んでいましたが、目的は同じでした。これからの地方金融機関が取り組むべき方向であることに間違いはありません。
今回の小論がそうした動きに多少のお役に立つことを希望しています。