スマートシニア・ビジネスレビュー 2011年8月2日 Vol.158

hikikomori先週、仙台での講演でお話しした際、

「どうすれば家にこもりがちな主人を外に出せますか?」

という質問を受けた。

 

また、別のNPOの方からも

「どうしたら私たちの活動に男性を巻き込めるでしょうか?」と、似たような質問を受けた。

 

その場では「外出の際は必ず主人を誘う」「昼食だけは外で食べてと言う」「一緒に来てほしいと頼み込む」などのいろいろな意見交換をした。

 

その場で言い足らなかったことをこのレビューでお伝えしたい。

退職したシニア男性にはこうした

「ひきこもり」がちな人が多いようだ。

これに対して、シニア女性は男性に比べて

外出意欲が旺盛で活動的に見える。

 

この傾向は、例えば、私の講演機会でも明確に見られる。

「高齢期をいかにしていきいきと過ごすか」というテーマの場合、

参加者は60代以上の女性が78割となる。男性の参加は少ない。

先週の講演でも参加者の8割程度が女性だった。

 

一方、「高齢者向けのビジネスはどうすればよいか」というテーマの場合、

9割以上が男性となる。しかも、65歳以下の現役ビジネスマンである。

 

女性はビジネスより日々の生活に関心があり、

自分が長生きすることが分かっているので、

後半生をいかに過ごすかにより興味があると言えよう。

 

一方、男性の場合、女性のような積極派も存在するが、

多くの人は現役サラリーマン生活が終わると、

ひきこもり傾向が強まるようだ。

 

このひきこもり傾向の強まりは、人それぞれに理由がある。

膝が痛むなどの健康上の理由で

外出がおっくうになるという人も少なくない。

 

だが、サラリーマン退職者に一番多いのは、

会社務めが終わり、毎日行く所がないので、

自宅にいる時間が長くなるという人だ。

 

私はこれまで講演や寄稿で次の通り、

「現役サラリーマンが退職後に困る5つのない」

という話を何度もしてきた。

 

1.毎日行くところがない

2.肩書きがない

3.仕事以外の趣味や特技がない

4.会社以外の人脈がない

5.何をすればよいかわからない

 

したがって、この5つの「ない」を解決すると

男性退職者に喜ばれるので、

これを解決する商品・サービスを考えるとよいと

アドバイスしてきた。

 

たとえば「毎日行くところがない」ということの本質は、

実は「外出する目的がない」ということである。

だから、その人が外出する目的をつくってあげる、

きっかけをつくってあげる、というのが有効となる。

 

では、シニア男性の「外出する目的」に重要なことは何か?

 

かつて、電通が中高年のレポートを発表した際、

「男はコレクション、女はコネクション」

というコピーをつけた。

これは言い得て妙である。

 

mcpこのコピーの意味は、女性は一般に、

友人・知人とのつながりを好むということ。

余った時間があれば、友人とカフェでおしゃべりしたり、

一緒に旅行したり、他人とのコミュニケーションそのものを楽しむ傾向が強いということだ。

←シニアのためのスタバ「マザー・カフェ・プラス」

 

これに対して、男性は一般に、

自分の嗜好性の強いものにこだわる傾向が強いということ。

プラモデル、鉄道、カメラ、つりなど、

一人でできること、一人でやりたいことをやりたがる。

ただし、同じ趣味をもち、レベルが近しい人とは

親密になりやすい傾向がある。

 

これらからお分かりのように、

シニア男性が外出する目的にはその人の嗜好性に近い

「テーマ」が重要なのである。

 

しかも、そのテーマが絞り込まれ、

その人の好みに近ければ近いほど、

参加意欲が高まる。

 

東京・新宿に本部のあるクラブツーリズムは、

こうした「テーマ」を前面に出した

「テーマ型旅行」を展開している例である。

男性の参加者も多い。

 

絞り込んだテーマ設定。

これがシニア男性をサービスに惹きつけるための

有効な方法の一つだ。

 

 

参考:

第三の場所 - 毎日定期的に「行く所のない退職者」が増える