スマートシニア・ビジネスレビュー 2009年4月27日 Vol.129
家庭菜園とは自宅の庭や空き地を活用して自分で野菜を栽培することだ。
退職者が家庭菜園に取り組む理由としては、次の理由が多い。
① 健康維持の活動としてちょうどいい、
② 自分で作った安全な野菜を食べたい、
③ 土いじりが面白い、
このように退職者にとっての家庭菜園の多くは、
基本的に自分で楽しむ趣味の領域である。
だから、作った野菜を消費するのは
作った本人とその家族が主体だ。
だが、作った野菜を食べきれずに困ることも多い。
この場合、隣近所や知人におすそ分けして処分するが、
それでも余って結局廃棄する例も多い。
廃棄されている余剰生産物がどれだけあるかの
きちんとしたデータは存在しないが、
家庭菜園のすそ野の広がりを考えれば、
その量はけっして馬鹿にできない規模と思われる。
そこで、この余剰生産物を何らかの形で販売できれば、
こうした無駄をなくせるだけでなく、
退職者の収入源にもなる。
新潟市の「ひらせいホームセンター」が5月から始める
「野菜のフリーマーケット」が、まさにそのサービスである。
このサービスは、ホームセンター全店舗に小規模の販売スペースを設置し、希望者が持ち込んだ野菜を、手数料などを取らずに管理・販売するというもの。
主な対象とする野菜は、トマト、ナス、キュウリといった日持ちしない夏野菜とのことだ。
各店舗前にカーポートを設置した16~33平米程度の
販売スペースを用意し、事前に申込書を提出した人から
先着順で店舗当たり20人に提供する。
申込者は持ち込んだ野菜の販売価格を自由に決定し、
売上から袋代などの実費を引いた分が収入となる。
これはまさに巷のフリーマーケットと同じだ。
サラリーマン退職者の多くは年金生活者となる。
年金が主たる収入の生活になることで
現役時代に比べて格段に財布のひもが固くなる。
この「倹約志向」の強まりは、現役の人には
理解しづらい感覚だ、と多くの退職者の方がいう。
だが、年金収入以外の副収入が何らかの形で得られるなら、
気分的にも楽になり、消費意欲も湧く。
これは前回の本レビューで紹介した「いろどり」の
75歳を超えたおばあちゃんたちの
消費行動を見れば明らかだ。
だが、収入が得られるとはいえ、サラリーマン時代のように、
やりたくない仕事を生活のために無理やりやるのは
もう嫌だという人も多いだろう。
この意味で、家庭菜園という自分がやりたいことをしながら、
副収入も得られるという生活は
多くの退職者にとって理想的といえよう。
一方、こうした取り組みはホームセンターにとって
どういうメリットがあるのか。
ひらせいホームセンターの年間売上は約340億円。
そのうちホームセンター部門の売上の4割が
家庭菜園関連の商品という。
つまり、家庭菜園での余剰生産物の受け皿をつくることで、
家庭菜園者によるホームセンターの利用を
促進させようという考えなのだ。
このように年金生活者の副収入つくりを支えれば、
自社の売り上げを伸ばすことになる。
こうした考えは他の業態でもいろいろ応用できるだろう。
参考情報
ビジネスモデルの視野を広げよ-「単独孤立型」から「連結連鎖型」へ