スマートシニア・ビジネスレビュー 2018年3月14日 Vol.223
私が応援しているベンチャー企業、株式会社チカクの主力商品「まごチャンネル」が、製品デザインの分野で世界的に権威ある「iFデザインアワード2018」を受賞しました。
このアワードは、ドイツ・ハノーバーを本拠地とする世界で最も長い歴史を持つ独立系デザイン団体iF International Forum Designが主催しており、毎年優れたデザインの製品を選出し授与しています。
過去の受賞作品にはアップル社のMacBookシリーズやiPhoneシリーズなども名を連ねており、このアワードの水準の高さが伺えます。
今年度は54の国・地域から集まった6,400件を上回る応募があったとのこと。オシャレなデザインの多いヨーロッパ製品が居並ぶ中で、日本のベンチャー企業の製品が選ばれたのは素晴らしいことです。
私が初めて「まごチャンネル」のセットトップボックス(写真)を見た時の印象は「ハイテク製品なのに人間の温かみがあるな」というものでした。
ハイテクとかIoTとか言うと、どうしても技術を前面にひけらかした製品が多いのですが、これはハイテクでありIoTでありながら、全くそうした匂いがしない。この点は、下記の日本経済新聞の連載でも書いた通りです。
スマホでは不可能な臨場感が世代間の絆を深める「まごチャンネル」
「まごチャンネル」は老親と離れて暮らす子供が、老親のいる実家のテレビに孫の動画や写真を直接送るコミュニケーションサービス。
老親にはPCやスマホの操作が苦手だったり、スマホの画面では小さすぎて見づらかったり、そもそもインターネットを利用していなかったりという状況がまだまだ多い。
こうした老親が自力で使えるための製品として、使いやすさをとことん工夫し尽くした結果が、今回の受賞につながったのだと思います。
そして、嬉しいのは、このようにシニアの使いやすさを徹底的に考え抜いたサービスを提供しているのが30代、40代中心の若手ベンチャー企業だということです。
社長の梶原さんが40代前半で一番年長ですが、あとのメンバーはほとんどが30代。
私はかつて拙著「成功するシニアビジネスの教科書」のエピローグに「シニアビジネスはシニアのためだけでなく、若者のためにもなる」と書きました。「まごチャンネル」がこのことを実践しつつあることを大変心強く思います。
とはいえ、通常は若い人が自分よりも年長の人の気持ちを理解するのがなかなか難しい。自分がその年齢になった時に、身体的・心理的にどんな状態になるのかの実感が持てないからです。
そこで「まごチャンネル」のメンバーには、私が運営している「東北大学スマート・エイジング・カレッジ(SAC)東京」に参加してもらっています。
脳科学や心理学、医工学、免疫学、最先端のゲノム医療などの生命科学の知見から、シニアの消費行動に関する多くのインサイトが得られるからです。
先日「脳内の報酬系・罰系が消費行動にどう影響するか」をテーマにした月例会に出席したメンバーが「めちゃくちゃ面白くて、勉強になりました!」と言っていました。
年齢差による経験差は「学び」で埋められる。
そのことを再認識しました。