スマートシニア・ビジネスレビュー 2012年5月22日 Vol.177
私の所属する東北大学加齢医学研究所
スマート・エイジング国際共同研究センター所長の
川島隆太教授との共著です。
タイトルは「スマート・エイジングという生き方」。
「年を重ねるのが楽しくなる!」という頭書きがついています。
なぜ、私たちがこの本を書こうと思ったのか。
第一の理由は、私たちが提唱している
「スマート・エイジング」の理念を
書物の形で正確にお伝えしたかったからです。
第二の理由は、アンチエイジングなどという、
とんでもない言葉がまかり通っている現状に対して
きちんとモノを申し上げたかったからです。
実は東北大学では、06年から
「スマート・エイジング」という概念を提唱しています。
06年7月、当時、私は大学の国際戦略業務に取り組む一方、
最大効果を生み出す差別化戦略を大学に提案しました。
それが「スマート・エイジング・プログラム」でした。
その後、07年3月に
スマート・エイジング・プログラム推進室が設置され、
09年1月に現在のセンターに発展・改組されました。
センター設立後、AARPとの包括学術協定締結から始まり、
学習療法の米国展開、スマート・エイジング・スクエア事業、
スマート・エイジング・カレッジの事業化に取り組みました。
そして、11年1月にセンターの新しいビルが竣工し、
2月に引っ越しが行われ、4月の開所式と
スマート・エイジング・スクエア&カレッジ事業の
開始に向けて準備を進めていました。
ところが、3月11日に起きた東日本大震災で状況が一変。
予定していた事業はすべて開始延期になりました。
とは言うものの、いつまでも下を向いているわけにもいかず、
川島教授の強力なリーダーシップのもと、
いち早く研究活動を再開しました。
6月にはスマート・エイジング・スクエア事業の
第一弾であるカーブスを開始。
9月には第二弾である脳いきいき学部を開始。
そして、今年の4月に、ようやく1年遅れで
スマート・エイジング・カレッジを開講しました。
一方、こうした活動に時間を費やしているうちに、
「スマート・エイジング」という言葉が
一人歩きをするようになってきました。
「スマート・エイジング」という名を付した書籍が出版され、
「スマート・エイジング」という名称の株式会社まで現れました。
韓国では「スマート・エイジング」の名を冠した
国際シンポジウムが開催され、
オーストラリアでは「スマート・エイジング」の名のついた
研究機関まで登場しました。
しかし、これらの動きの共通点は、
「スマート・エイジング」という名は付しているものの、
「スマート・エイジング」について何の理念も語られておらず、
理念の裏付けとなる実践活動も存在していないことです。
いくら震災の影響があったとはいえ、
こうした状況を招いたのは
私たちの怠慢であると反省しました。
そして、「スマート・エイジング」という理念を唱道している
当事者自らが書物の形で正確にきちんと
その考えをお伝えすることにしたのです。
また、アンチエイジングという変な言葉が
まかり通っている現状に対してもモノを申し上げました。
この言葉がいかにおかしなものであるか、
なぜ、このような言葉が世の中に広まっているのかの
背景についても語りました。
詳しくは著書に書いてありますが、
アンチエイジングの意味は「若返り」ではありません。
アンチエイジングとは「死ぬ」という意味です。
アンチエイジングという言葉はアメリカからやってきたものです。
ところが、当のアメリカでも、良識派の人たちなかには、
この言葉を嫌っている人が大勢存在します。
こうした事実は、日本では意外に知られていません。
年をとるにつれ、私たちは体や心などいろいろな面で変化します。
ところが、あいにく、こうした変化は私たちにとって
必ずしも都合のいいことばかりではありません。
むしろ辛いことが多いのが現実です。
しかし、だからこそ、そういう変化に
もっと賢く対処する生き方を考えましょう、
そして、それを考え続けることを通じて
私たちはもっと成長しましょう。
そういう意味合いを込めたのが、
このスマート・エイジングという言葉なのです。
私たちは生きている限り、必ず年をとります。
ところが、年をとることがいいことか、
悪いことかを決めているのは、
実は私たち自身なのです。
そうであるならば、私たちは年のとり方を
主体的に選ぶことができるはずです。
年をとるにつれて
そのまま朽ち果てていく生き方を選ぶのか。
それとも、年を重ねるごとに
より賢く輝いていく生き方を選ぶのか。
どうせ年をとるなら、後者のほうがいいと思いませんか?
そのような「スマート・エイジング」という生き方を
実現するためのヒントとそれを支えている
私たちの研究と実践活動についてお話しました。
このささやかな小著が、毎日の生活を
前向きでいきいきとしたものに変えていく一助となれば、
著者として望外の喜びです。
年を重ねるのが楽しくなる![スマート・エイジング]という生き方
詳しい目次はこちら