スマートシニア・ビジネスレビュー 2004年7月6日 Vol. 54
オールアバウト・ジャパン「定年後の楽しみ方」ガイド役の工藤宇一さんが、夫婦でフランス自転車旅行をしたレポートをネットに公開されています。
今回はいつものガイド役ではなく、フランスでの自らの体験を語っているもの。これが、これまでの記事の中でも、とびきり面白い。
詳しい内容は、レポートをご覧頂くとして、
今回は、これについて感じたことを書きます。
その理由は、工藤さん夫妻の今回のフランスへの旅が、
高齢化・情報化時代における、
年配の方の新しい旅のスタイルではないかと思うからです。
今回の旅はいろいろな意味でユニークです。
まず、夫65歳、妻61歳の夫婦での自転車旅行。
しかも、行き先は遠い欧州のフランス。
そして、ハンディGPS、インターネット、パソコンを
駆使した若者顔負けのIT武装。
こう書くと、「オールアバウトのガイド役をやるほどの
"翔んだ人"だから、できるんでしょう」
などと思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、本人もお書きになっているように、
もともと自転車の選手だったわけでもなく、
パソコンおたくだったわけでもありません。
普通の(工藤さん、すみません)
サラリーマン定年退職者のおじさんだった方です。
なぜ、そんな普通の人がそこまでできたのでしょうか。
それは、たった一つ。
「短い人生、一度フランスで自転車旅行がしてみたい」
という強い思いです。
その思いの深さが、還暦を過ぎたお二人を
駆り立てたのだと思います。
工藤さんの今回の旅は、いわゆる旅行会社が
提案するシニア向けパック旅行とは対極の、
その人だけの「パーソナル商品」。
しかも、商品をつくるのは自分自身。
準備段階から旅の途中でのハプニング。
多くの失敗とその反省による工夫。
そして、新たな発見。
レポートの行間から、こうした「過程」を
味わうように楽しんでいらっしゃる様子が目に浮かびます。
これは、もはや、「商品」ではなく、
唯一無二の「作品」といってよいでしょう。
メーカー出身の普通のサラリーマン定年退職者でも、
その気になれば、こんなユニークな時間の楽しみ方ができる。
それを自ら実証されているところが、何よりも素晴らしい。
インターネットの普及が、それまでの団体旅行から
個人旅行への流れを加速したといわれます。
65歳の工藤さんも「ネットやIT機器がなければ、
ここまでのことを個人では絶対できなかった」
と断言されています。
こうした流れのなかで、悩ましいのが
旅行会社の役割でしょう。
高度成長時代に、団体向けパック旅行で
収益を上げる仕組みをつくったところほど、
旅行商品の「パーソナル化」は、
利幅が少なく、手間がかかるため避けたいものです。
しかし、お仕着せのパック旅行に物足りず、
個人でできることは極力個人で行い、
その過程をも楽しむ、というスタイルは、
もはや時代の趨勢です。
このような時代では、旅行会社は
右から左へ横流しをする「代理店業」ではなく、
顧客に「新たな価値」を提供しなければならないでしょう。
工藤さんが示しているのは、
これから旅行会社が提供すべき「新たな価値」のひとつが、
「個人の"作品"つくりのお手伝い機能」だということです。
それは、たとえば、フランス国内の交通手段の支援、
異国におけるネット接続環境の支援、
ハンディGPSの提供と使い方の教示、などが該当します。
クラブツーリズムの高橋会長も
「旅行会社は、今後商品企画で勝負する『プロデュース業』に
生まれ変わらなければいけない」とおっしゃっています。
今回の話は、そのプロデュースすべき中身が
何なのかのヒントに見えるのです。
工藤さんが再度、海外自転車旅行を実行するとすれば、
一番必要性を感じていらっしゃるのは、
旅の途中のコミュニケーションで苦労した
語学力ではないでしょうか。
旅の過程での実践的な語学力の支援も、
前記の新しい価値のひとつとなるでしょう。
かつてフランスに住んでいた私も、
当初フランス語がほとんどできず、辛い思いをしました。
英語をあまり話さないフランスで味わった「ショック」は、
相当大きかったことでしょう。
ただ、それは、 これからの人生をさらに楽しむための、
きわめて”ポジティブ”な「ショック」だったに違いありません。
●参考情報
オールアバウト・ジャパン「定年後の楽しみ方」ガイド役の工藤宇一さんが、夫婦でフランス自転車旅行をしたレポートをネットに公開されています。
今回はいつものガイド役ではなく、フランスでの自らの体験を語っているもの。これが、これまでの記事の中でも、とびきり面白い。
詳しい内容は、レポートをご覧頂くとして、
今回は、これについて感じたことを書きます。
その理由は、工藤さん夫妻の今回のフランスへの旅が、
高齢化・情報化時代における、
年配の方の新しい旅のスタイルではないかと思うからです。
今回の旅はいろいろな意味でユニークです。
まず、夫65歳、妻61歳の夫婦での自転車旅行。
しかも、行き先は遠い欧州のフランス。
そして、ハンディGPS、インターネット、パソコンを
駆使した若者顔負けのIT武装。
こう書くと、「オールアバウトのガイド役をやるほどの
"翔んだ人"だから、できるんでしょう」
などと思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、本人もお書きになっているように、
もともと自転車の選手だったわけでもなく、
パソコンおたくだったわけでもありません。
普通の(工藤さん、すみません)
サラリーマン定年退職者のおじさんだった方です。
なぜ、そんな普通の人がそこまでできたのでしょうか。
それは、たった一つ。
「短い人生、一度フランスで自転車旅行がしてみたい」
という強い思いです。
その思いの深さが、還暦を過ぎたお二人を
駆り立てたのだと思います。
工藤さんの今回の旅は、いわゆる旅行会社が
提案するシニア向けパック旅行とは対極の、
その人だけの「パーソナル商品」。
しかも、商品をつくるのは自分自身。
準備段階から旅の途中でのハプニング。
多くの失敗とその反省による工夫。
そして、新たな発見。
レポートの行間から、こうした「過程」を
味わうように楽しんでいらっしゃる様子が目に浮かびます。
これは、もはや、「商品」ではなく、
唯一無二の「作品」といってよいでしょう。
メーカー出身の普通のサラリーマン定年退職者でも、
その気になれば、こんなユニークな時間の楽しみ方ができる。
それを自ら実証されているところが、何よりも素晴らしい。
インターネットの普及が、それまでの団体旅行から
個人旅行への流れを加速したといわれます。
65歳の工藤さんも「ネットやIT機器がなければ、
ここまでのことを個人では絶対できなかった」
と断言されています。
こうした流れのなかで、悩ましいのが
旅行会社の役割でしょう。
高度成長時代に、団体向けパック旅行で
収益を上げる仕組みをつくったところほど、
旅行商品の「パーソナル化」は、
利幅が少なく、手間がかかるため避けたいものです。
しかし、お仕着せのパック旅行に物足りず、
個人でできることは極力個人で行い、
その過程をも楽しむ、というスタイルは、
もはや時代の趨勢です。
このような時代では、旅行会社は
右から左へ横流しをする「代理店業」ではなく、
顧客に「新たな価値」を提供しなければならないでしょう。
工藤さんが示しているのは、
これから旅行会社が提供すべき「新たな価値」のひとつが、
「個人の"作品"つくりのお手伝い機能」だということです。
それは、たとえば、フランス国内の交通手段の支援、
異国におけるネット接続環境の支援、
ハンディGPSの提供と使い方の教示、などが該当します。
クラブツーリズムの高橋会長も
「旅行会社は、今後商品企画で勝負する『プロデュース業』に
生まれ変わらなければいけない」とおっしゃっています。
今回の話は、そのプロデュースすべき中身が
何なのかのヒントに見えるのです。
工藤さんが再度、海外自転車旅行を実行するとすれば、
一番必要性を感じていらっしゃるのは、
旅の途中のコミュニケーションで苦労した
語学力ではないでしょうか。
旅の過程での実践的な語学力の支援も、
前記の新しい価値のひとつとなるでしょう。
かつてフランスに住んでいた私も、
当初フランス語がほとんどできず、辛い思いをしました。
英語をあまり話さないフランスで味わった「ショック」は、
相当大きかったことでしょう。
ただ、それは、 これからの人生をさらに楽しむための、
きわめて”ポジティブ”な「ショック」だったに違いありません。
●参考情報