スマートシニア・ビジネスレビュー 2008年3月18日 Vol. 115

hakodateリクルート北海道じゃらんが発行する「観光会議ほっかいどう」の2008春号に掲載された「2007年道内人気観光地調査」に目がとまった。

これによると、これまで行って「満足した」「良かった」感動率・満足度のベスト5は、第一位:函館、第二位:利尻島、第三位:礼文島、第四位:湯の川温泉、第五位:登別温泉となっている。

また、これまでに訪問して、もう一度行きたいと思う道内旅行先の
リピート意向率のベスト5は、第一位:函館、第二位:礼文島、
第三位:利尻島、第四位:湯の川温泉、第五位:登別温泉となっている。

感動率・満足度のベスト5とリピート意向率のベスト5は、
第二位と第三位が入れ替わっているだけで、すべて同じ。
これらが人気スポットであることを知った。

ところが、私はこの5つともほとんど知らなかった。
なぜなら、これまで縁がなく、この5つのどこにも行ったことがないからだ。

だから、なぜ、この5つに人気があるのかの理由を知りたいと思ったが、
この雑誌ではまったく触れられていなかった。
恐らく北海道の人を対象とした雑誌なので、
そんな理由は分かりきっていることで、今更説明の必要もないのだろう。

しかし、北海道の観光振興のためには、
いかに道外の人に来てもらうかがカギのはず。
道外の人にとって、道内の人に人気のスポットは、
その人気の理由を知りたいものだ。

それは見知らぬ土地に行って、ガイドブックに書いてある店にだけ行くより、
ガイドブックに載っていない地元の人しか知らない
人気の店に行ってみたいのと同じ心理だ。

自分が行ったことのない場所は、まず、それがどこにあるのか
分からないことが多い。
ネットで少し調べたら、利尻島は稚内の北にあり、
礼文島はそのさらに北にある日本最北の島だと知った。
また、湯の川温泉は函館の東に、登別温泉は札幌のほぼ南、
室蘭と苫小牧の間のあることを知った。

「観光会議ほっかいどう」の座談会でも話したとおり、
自分にとっての北海道のリアリティを伴った知識は、
時々仕事で訪れる札幌のごく一部と以前休暇で訪れた知床の一部のみだ。
だから、他はほとんど机上での知識しかない。

一方、たとえば、これが東北の温泉地や観光地であれば私も相当詳しい。
なぜなら、そのほとんどに行ったことがあるからだ。

旅行を仕事にしている例外的な人を除けば、
多くの人は自分の知っている土地の知識に偏りがあるはずだ。
そうした知識は、その人のこれまでの縁の軌跡に依るからだ。

人は一生のうちに何回旅行に行けるのだろうか。
特に現役サラリーマンの場合、土日で行けるのは比較的近場に限られるので、
通常は五月の連休、夏休み、正月休みの三大連休がその機会となる。

仮に22歳で大学を卒業して60歳で退職する場合、
三大連休を使って旅行できる回数は、3回/年×38年=114回。
このうち、実家への帰省や冠婚葬祭などで半分を費やすとすると、57回。
これを38年で割ると1.5。

つまり、現役の間は、年平均1.5回程度しかフリーの旅行に行けない。
現役退職後に多くの人が最初にやりたいことの筆頭に旅行を上げるのには、
こうした理由があるのだ。

一方、現役にとっては、現役時代の旅行機会は本当に貴重である。
だから、この貴重な機会を「はずしたくない」気持ちはかなり強い。

買った本がつまらない場合、読むのをやめれば時間の浪費は最小限ですむ。
ところが、選んだ旅行先がつまらない場合、途中でやめて引き返すというのは、
なかなか難しいだろう。

だから、貴重な旅の機会をはずさないための、観光ガイドブックとは違う
「指南サービス」には大きな潜在需要があると思う。

sinumadeniikitaiパトリシア・シュルツというフリーの旅行ライターが書いた
「死ぬまでに一度は行きたい世界の1000ヵ所」という本がある。これはアメリカで250万部を超えるベストセラーとなった。ヨーロッパ編、南北アメリカ編、アジア・アフリカ編の3冊が翻訳で出ている。アジア・アフリカ編には日本のことも書いてあるが、その件数は少ない。

これに倣って「生きているうちに行きたい日本の100ヶ所」のような指南本をつくれば、結構売れる気がするのだが、いかがだろうか。

人が一生にできることには限りがある。
この本が売れているのは、
生きた言葉と表現で、未知の行き先を旅するような
疑似体験を楽しませてくれるからに他ならない。

単なる国内観光地のガイドブックの寄せ集めではない、
“粋な”指南サービスの出現に期待したい。

 

●参考情報

座談会 団塊の男達を北海道に呼び込め!
観光会議ほっかいどう 2008年春号Vol.25

リタイア・モラトリアム-すぐに退職しない団塊世代は何を変えるか
(日本経済新聞出版社)