親が元気なうちに準備を 遺言書のココがポイント

解脱12月号 特集 しあわせ家族研究室 終活①遺言書

解脱_2013年12月号_表紙_2今月のテーマは「遺言」。財産相続を巡って、家族親族が争うトラブルが増えています。そうした問題を避ける方法として、「遺言書」を考えてみましょう。ロングセラー『親が70歳を過ぎたら読む本』の執筆をはじめ、シニアビジネスのパイオニアとして知られる村田裕之先生に、今月は「遺言書の重要性と相続トラブルの予防」についてお聞きします。

 

元気なうちに遺言書を

 

遺言は民法で規定される法律行為のうちの「単独行為」(単独の意思表示を要素とする行為)です。たとえば、あなたが遺言者の場合、配偶者や子供があなたに作成を働きかけることは遺言書の趣旨に合いません。

 

その一方で、遺言書がないために、あなたの死後、相続トラブルが発生した場合、迷惑を被るのは配偶者や子供たちです。

 

これを踏まえると、遺言者が遺言書の重要性を認識し、「自らの意思で」死後の相続トラブルが起こりにくい内容の遺言書を残すことが望まれます。

 

解脱_2013年12月号_3-1_2遺言書を残すメリットは、遺言者の死後、家族親族などの相続人の間で、相続財産の割り当てを決める「遺産分割協議」を行なう必要が少なくなり、相続人同士でもめごとが起こりにくくなることです。

 

相続については、まず遺言書が優先されます。わが国の社会は個人の意思が尊重される制度づくりがなされており、遺言も個人の意思と考えられるからです。

 

遺言書がない場合、遺産はいったん、相続人の「共同所有」となります。しかし、そのままでは各相続人単独の所有財産とはなりません。相続人が遺産を相続しても、それをいつまでも共有状態にしておくと、財産の管理・利用・処分のうえでさまざまな障害が生じます。

 

そこでこの共有状態を解消し、相続財産ごとにその取得者を決めるのが、「遺産分割」です。基本的には相続人同士が全員で話し合って、誰がどの財産をもらっていくかを決めることになっています。この話し合いを「遺産分割協議」と言います。この中で「遺産分割協議書」が作られます。こうして民法の定める「法定相続分」で相続することになります。

 

解脱_2013年12月号_3-2_2問題なのは、遺産分割協議書には法定相続人全員の「実印」と「印鑑登録証明書」が必要になることです。つまり、法定相続人全員の合意を得る必要があり、役所の手続きが面倒なうえ、法定相続人が多人数の場合、合意までかなりの時間と労力を要すことになります。

 

日本ではまだ遺言書が一般化していません。しかし、近年、経済不況による失業など、経済的理由で家族の財産を当てにし、200300万円程度の相続で争う事例が増えています。自分が亡くなった後の家族親族の不要な争いを避けるためにも、遺言書は残しておきたいものです。

 

遺言書を作成する場合は、心身の元気なうちに行ないましょう。というのも、私たちは自分がいつ死ぬか予測できないからです。また、遺言書作成は、財産の確認・評価等、ある程度のエネルギーと時間を要す作業であり、さらに認知症で判断能力に問題があるなど、作成者の能力が不十分な状態で書かれた遺言書は、相続人によって無効とされる場合があるからです。

 

遺言書は「公正証書遺言」で

 

遺言書には3種類あり、本人が自筆で書く「自筆証書遺言」、公証役場(※1)で公証人(※2)が作成する「公正証書遺言」、遺言書の内容を密封して公証人も内容が確認できない「秘密証書遺言」があります。

 

この中では、公正証書遺言をお勧めします。その理由として、①作成者の意思に基づき、登記簿謄本などの正確な資料をもとに、公証人が法的に有効な文書を作成するため不備がない、②原本が公証役場で保管され、誰かに盗まれたり、改ざんされたりする恐れがない、③家庭裁判所での「検認」が不要で迅速に遺言執行を手続きできることが挙げられます。

 

公正証書遺言の作成費用は財産の評価額で変わります(財産が500万円~1000万円以下の場合、手数料は17千円)。また、証人が2人必要で、公証役場に依頼すれば手配してくれます(報酬別途)。

 

遺言書には、財産の分与だけでなく、希望があれば葬儀の方法やお墓の管理についても明記しておきましょう。残された家族が困らないようにするためにも、心配りが大切です。

 

解脱_2013年12月号_3-3_2家族会議をひらく

 

公正証書遺言の効果というのは絶大なものですが、それによって相続トラブルが完全になくなるわけではありません。トラブルを予防するには、家族親族が仲良くして、人間関係をよくするしかないというのが、本当のところです。

 

相続の形として理想的なのは、遺言者が生前のうちに相続人全員を集め、財産の割り当てを発表して、合意してもらうことです。そうすれば遺言書も必要なく、死後、トラブルになりにくい。しかしこれには、家族親族の信頼が強固であるという前提があります。

 

現代社会では核家族化が進行し、何もしないと家族関係が疎遠になりがちです。そうした中で相続問題が起きると、互いが自分の権利だけを主張してトラブルになりやすい。

 

そこで、最低、年に1度、たとえば盆や正月などに実家で「家族会議」をひらくのはいかかでしょうか。家族会議を通じて、日頃縁遠い子供や親と話し合い、お互いの立場や状況を知って、理解を深めるのです。

 

また、普段関わりの薄い親族とも、2年に1度程度は顔を合わせ、お互いを知り合うイベントをつくりましょう。タイミングとしては、親族の冠婚葬祭のときに、懇親会を催すのが自然でしょう。

 

私は相続トラブルを根本的になくすには、かつての日本人が持っていた「互譲互助」の精神を取り戻すしかないと思っています。これは出光興産の創業者・出光佐三が語っていた言葉で、「お互いが譲り合い、助け合う」という意味です。相続トラブルの根幹には、家族の関係性よりも自分の利益を追求する利己的な権利意識の高まりが原因としてあります。

 

こうした意識を改めていくためにも、家族・親族間のコミュニケーションを深め、互譲互助の精神を家族の中で育んでいくことが、何より大切です。

 

1 公証役場……遺言書や任意後見契約書など、公に認められる必要のある重要書類「公正証書」の作成等を行なう官公庁。公証人が執務している。全国に約300ヵ所あり、日本公証人連合会のホームページから、その所在地が確認できる。

2 公証人……法務大臣が任命する公務員。原則30年以上の実務経験を有する法曹有資格者、また多年法務事務に携わり、これに準ずる経験を有する人で、検察官・公証人特別任用等審査会の選考を経た人の中から、その多くが任命される。

 

 

参考:親が70歳を過ぎたら読む本

 

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