スマートシニア・ビジネスレビュー 2013年6月9日 Vol.195
先日のTBSテレビ・ひるおびでも紹介されていましたが、惣菜で有名なオリジン弁当が食事の宅配サービスを始めました。市場参入が相次ぎ、激戦化する食事宅配市場ですが、このオリジン弁当のサービスは今後一歩抜きんでる可能性があります。
理由その1:1日単位で注文できること。他社は週単位・月単位での申込みで、まずくてもキャンセルできない仕組みになっているのに比べ良心的です。
理由その2:電話一本で注文でき、面倒な登録が一切不要なこと。商品提供側にとっては登録作業を利用者がしてくれることで手間が省けるのですが、特に高齢者にとってはこの作業が鬱陶しいことがしばしばあります。
理由その3:お米や飲料など重いものも手数料なしで一緒に運んでくれること。これは他社では取り扱っていないサービスで、注目です。特に重い荷物の運搬が苦痛で買い物を避ける高齢者にとって、こうしたサービスの存在は購入へのしきいを下げることになります。
また、この仕組みは利用者にとっての利便性が高いだけでなく、商品提供者にとっても利益率を上げる手段になります。
私は2004年5月に上梓した拙著「シニアビジネス 多様性市場で成功する10の鉄則」に『出張駆込み寺』と題して、近い将来、商品の提供場所は「店頭」から「在宅」へ向かうことを予言しました。その要旨はつぎのとおりです。
(1) 高齢化が進むと、力仕事や細かい作業が自分では難しくなる人が増えてくる。
(2) また、高齢世帯では一人暮らしの人も増え、外出頻度も少なくなる。
(3) このため、これからは、多くの商品・サービスの提供場所は「店頭」から「在宅」へ移っていく。
(4) 在宅サービスでは、サービス提供者がいったん顧客から気軽に相談される「駆込み寺」のような立場に立てると、本来のサービス「以外」のさまざまな相談を「真っ先に」寄せられる。
(5) すると、顧客からの相談に素早く応えていくことで、顧客に満足してもらいながら「自然に」他のサービス機会を拡大することが容易になる。
(6) したがって、サービス提供者は、顧客が必要な時に最初に声がかかる「出張駆込み寺」にならなければならない。
(7) この「出張駆込み寺」には次が求められる。
① 話し上手で気が利くスタッフの充実
② 専門業者に頼むほどでない小さな仕事でも対応できるフットワークの軽さ
③ エリア・マーケティングの徹底による事業効率の高さ
最近の食事宅配や生活支援サービスは、まさに、この「出張駆込み寺」のポジション獲得競争に他なりません。
今後はこのオリジン弁当の食事宅配のように、食事の質がトップクラスであることに加えて、いかに食事以外の周辺サービスを妥当な価格で提供できるかが主戦場になっていくでしょう。