村田裕之の団塊・シニアビジネス・シニア市場・高齢社会の未来が学べるブログ

団塊・シニアビジネスのパイオニアで高齢社会問題の国際的オピニオンリーダー、村田裕之が注目の商品・サービス、シニア市場トレンド、海外シニアマーケット動向を独自の切り口で解説。ビジネスの視点、教訓・学び、生活のヒントをお伝えします。

「ビジネス視点」の記事一覧

シニアの健康管理で重要な計測項目とは?

スマートフォンを活用したシニア向けヘルスケアアプリが多く登場している。体組成計やスマートウォッチとの連携によるサービス提案も多い。だが、介護予防を目的とする場合、こうしたアプリでできることはごく一部に限られている。シニアを対象とした健康管理には血圧管理と定期的な血液検査が不可欠だ。ヘルスケアアプリは多くの機能をそろえ、健康管理に有用だと謳っている。だが、最も重要な介護予防の観点ではできることはごく一部。誇大広告に惑わされないようにしよう。

「脳トレ手芸」累計販売2.6万個

手芸用品大手、ユザワヤ商事の「脳トレ手芸シリーズ」が50代、60代の女性に好評だ。2020年12月発売以来、第一弾「クロスステッチ刺繍(ししゅう)キット」と第二弾「編み物キット」の累計販売数が約26,000個となった。同社によれば従来品の4倍規模とのことで縮小気味の手芸市場では異例のヒットだ。ヒット理由の第一は「自己復活消費」を後押ししていること。第二は楽しく継続でき脳トレにもなることだ。

外出の「習慣行動化支援」がビジネス機会になる

クラブツーリズムが「コロナ禍の2年間を振り返って、どんな変化があったか」を尋ねたアンケート結果で目立ったのは「外出がおっくうになった」「出かけるのが面倒に感じる」といったコメントが非常に多く見られた点だ。実はこうしたコメントは、「意欲」や「やる気」の低下を表している。原因として第一に考えられるのは、「認知機能の低下」だ。運動不足や会話不足は大脳の前頭葉にある意欲の中枢の機能低下を促す。また、テレビやYouTubeを見る時間が増えると大脳の前頭前野に抑制がかかり、習慣化すると認知機能が低下する。第二に考えられるのは、外出しないことが「習慣行動化」したためだ。

シニア消費を促す仕組み

シニアの消費を促すためには、売る側の努力だけでは不十分です。商品・サービスを売る側の企業が年金以外の副収入を得る機会を提供すれば、可処分所得が増えるので消費が促されます。商品を売る側が意図的に自社の顧客に仕事の機会をつくることです。商品を売ることだけを考えるのではなく、商品を買う側が金銭的報酬だけでなく、社会とのつながりを得るなどさまざまな報酬を得られるビジネスのサイクルを考えることです。

ターゲットも機能も絞り込んで「不」を解消せよ

私は2004年に上梓した拙著「シニアビジネス」で「シニア市場とは多様性市場」と主張し続けてきた。ところが、これを聞いてあれもこれもとサービスを「てんこ盛り」にして商品の売りがぼけてしまう例が後を絶たない。シニア市場では、むしろターゲット客も商品機能も絞り込んだ方がうまくいく。最近の良い例がパソコン周辺機器メーカー、バッファローの「ラクレコ」だ。

「一人暮らし世帯特有」の価値を組み込む

社会の高齢化が進むと一人暮らし世帯が増える。この世帯が求める価値のキーワードは「小型(小口)」「軽量」「健康」「安心」「手軽」「高品質」だ。実は一人暮らし世帯でなくても、「一人で楽しみたい」というニーズもかなり存在する。クラブツーリズムが提供している「ひとり旅」は、そのような「一人で参加して楽しみたい人」向けの「おひとり参加限定」の旅行商品だ。

VRを使えばリアリティを感じられるか?

高齢者をターゲットにVRを用いたサービスが散見されますが、VR機器を使えばリアリティを感じられるというのは幻想です。ヘッドセット型のVRを体験した人はお分りだと思いますが、実物らしさ、リアリティとは程遠いのが実態です。理由はヘッドセット装着による圧迫感とディスプレイ画質の低さです。映画「ボヘミアン・ラプソディ」を見た人の多くは「ライブの熱気であたかも会場にいるかのように感じた」と言います。実は臨場感を感じる最大の理由は、ヘッドセットによる拘束がなく「大画面・高画質」で画像を見るからです。

これからは「楽しみながら脳が鍛えられる」商品が増えていく

脳計測実験の結果、クロスステッチ刺繍や編み物を行うことで大脳の前頭前野を中心とした脳活動が活発化することが実証されている。前頭前野は脳の司令塔と呼ばれる認知機能の中枢で、この部位の活動が日常的に活発化すれば認知機能の維持・向上が期待できる。年配の女性には刺繍や編み物などが好きな人も多い。好きな手芸に取り組むことで、楽しみながら脳の健康を維持できる。これからは団塊世代を対象にしたこうした商品が増えていくだろう。

アンケート調査で機会損失が大きくなる「2つの理由」

アンケート調査という手法は、設問を回答者の「現状の事実関係の確認」に限定すれば、回答者が虚偽の回答をしない限り有用です。例えば、性別、住所、年齢、生年月日、資格の有無などを尋ねる場合です。しかし、設問内容を未経験なことに対する「願望」や「意向」を尋ねる性質のものにすると、回答の信憑性は著しく下がります。またアンケートの回答の信憑性は選択肢のデザインでも変わります。

コロナ後の日本経済「V字回復の秘策」は、じつは「アクティブシニア市場」にあった

シニアの消費の特徴は、3K(健康、孤独、経済)不安の解消にある。年を重ねても病気になりたくない、“健康”でいたいとスポーツジムやゴルフにお金をかける。会社勤めがなくなり、交際の幅が狭まってきたら“孤独”を解消するため男性の多くはカメラやオーディオ、釣り、登山用具などのコレクションを充実させる。男性がコレクションなら、女性の特徴はコネクションだ。友人と高級ホテルでランチをしたり、一緒に和服を着て歌舞伎座で観劇を楽しむ。仲間と連れ立っての消費活動で孤独を癒やすので、経済効果は大きい。

1日30分でコロナ太りを解消!男性版カーブス

メンズ・カーブスとは、女性専用フィットネスで業界トップのカーブスの男性版です。実は世界中で日本にしか存在しません。理由は日本で商品化されたからです。特長は①筋トレ・有酸素運動・ストレッチの全てが30分で完結する、②個別指導の「セミパーソナル・サービス」を追加料金なしで受けられる、③自分のペースで無理なくできてコスパもよいことです。女性用カーブスではコーチは全員女性ですが、メンズ・カーブスでは男性と女性がコーチとしてサポートします。コーチとのコミュニケーションが多いことで継続の動機が上がることもポイントです。

ばらまくなら「現金」ではなく、副収入の「機会」を

仮に5万円給付したとしてもお金をもらった人の半分以上は先行き不透明なこの時世では使わずに「貯金に回す」人が多いでしょう。だから国税を投入しても大した景気刺激策になりません。ばらまくべきなのは「現金」ではなく「機会」です。機会とは、年金受給者の就業機会、副収入を得るためのスキルアップ機会などです。単に個人に5万円ばらまくなら、生活費の一部や旅行代金に消えて終わります。しかし、その5万円がきっかけでIT機器のスキルが上がったり、資格取得につながったりすれば、副収入機会が広がり、消費も増えます。