スマートシニア・ビジネスレビュー 2004年9月10日 Vol. 58

mr-handyman今、アメリカでは退職サラリーマンがフランチャイズを買って、フランチャイズ・オーナーになるケースが増えています。

9月8日のCNNによると、退職サラリーマンに人気のフランチャイズの例として、次が挙げられています。

1. ハンディマン・サービス
2. ゴルフ用品販売
3. 個人向けフィットネス
4. 中小企業向けコーチング

ハンディマン・サービスとは、専門のリフォーム業者や
工事業者がやらない家周りのちょっとした修理などを
請け負うサービスです。

拙著「シニアビジネス」で取り上げた
「ミスター・ハンディマン」など、多くの業者が存在します。
また、個人向けフィットネスとは、
顧客一人ひとりにダイエットを指導し、
栄養アドバイスを行うものです。

日本でフランチャイズというと、
コンビニや外食産業が圧倒的に多いのですが、
フランチャイズ王国アメリカには
実に多種多様な業態があるものです。

特に、個人向けフィットネスや
中小企業向けコーチングなどの
一見属人的ノウハウに依存していると思われる分野にも
フランチャイズ・ビジネスが存在するのが興味深いです。

こうしたフランチャイズのオーナーになる退職サラリーマンは、
一体、どのような経歴を持っているのでしょうか。

ハンディマン・サービスとゴルフ用品販売の
フランチャイズ・オーナーになる人は、手先が器用で、
現役サラリーマン時代から自分で日曜大工をやったり、
ゴルフが好きだったりする人です。
これらは、趣味の延長を退職後のキャリアにする例です。

これに対し、個人向けフィットネスや
中小企業向けコーチングのオーナーになる人は、
もともとフィットネスクラブで指導者の経験がある、
あるいは人を指導する経験がある人です。
これらは、前職時代のキャリアを活用する例です。

もちろん、上記以外にも多くあるので一概に言えませんが、
退職サラリーマンが取り組みやすいフランチャイズとしては、
① 自分の趣味の延長にあること、
② 退職前のキャリアを活用できること、
が重要な条件となりそうです。

なぜ、退職サラリーマンでフランチャイズを買う人が
増えているのでしょうか。

その最大の理由は、
会社をリタイアしても、人生をリタイアせず、
「ナノコーポ」として独立起業する人が増えているからです。

ナノコーポとは、微細を意味するナノと
法人のコーポレーションとの造語です。
ナノコーポの定義は「Convergence of worker and company」。
つまり「働く人」と「会社」とが一体化するスタイルです。
社員が一人でも法人形態をとり、
個人事業やボランティアとは一線を画します。

アメリカ国勢調査局によると、
2002年現在でナノコーポを1760万人と見積もっています。
この数字は、アメリカの労働人口の約13.5%に相当します。

しかし、ナノコーポになりたくても、
年配のサラリーマン退職者にとって、
自分で独立起業するのは、まだまだ敷居が高いようです。

この敷居を下げるのが
「フランチャイズを買う」という方法なのです。

フランチャイズのメリットは、
①個人では得られない事業者としての認知度が得られること、
②商材や販売管理などの支援システムが得られることです。

大企業の社員だった時は、社員であることで
会社の看板を自動的に使うことができました。
しかし、独立すると、その看板は全く使えなくなります。

また、大企業時代は、経理、マーケティング、宣伝など、
事業に必要な多くの機能を担ってくれる人がいて、
いろいろと力を借りることが出来ました。
しかし、これも独立した瞬間、全く使えなくなり、
自分でゼロから準備しなければなりません。

こうした準備の手間を、ある程度省いてくれるのが
「フランチャイズを買う」という方法なのです。
つまり、フランチャイズとは、
「ナノコーポ・サポーター」としての役割を担っているのです。

定年制度のないアメリカで、
日本の定年60歳より前の年齢で、
第二、第三の人生を選択する人が大勢いるのは、
このような背景があるからです。

最近、日本でも団塊世代の定年による大量退職後の
ライフスタイルが話題に上ることが多くなっています。

年金の支給年齢を従来の60歳から65歳に
引き上げるのと引き換えに、
65歳までの雇用継続を企業に義務付けた
高齢者雇用安定法が成立しました。

ところが、この法律は企業の実態とかけ離れている
という声を多く聞きます。
今の会社で65歳まで働き続けたいと思っている人が
意外に少ないからです。

総務庁の調査では、40歳以上の4割以上が
少なくとも70歳までは働きたいと考えています。
しかし、年功序列が崩れ、実績主義が叫ばれるなか、
リストラ圧力のもとで働き続けるより、
収入が減っても、組織に縛られずに
自分のやりたいことで働き続けたい人が増えています。

こうした潜在ニーズの受け皿として、
日本のフランチャイズ・ビジネスの
一層の発展を期待したいものです。

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